過去ログ - 【ガルパン】逸見エリカ「友情は瞬間が咲かせる花であり、時間が実らせる果実である」
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61:名無しNIPPER
2016/09/24(土) 03:12:24.67 ID:+3HHJ9Wn0
『フラッグ車、行動不能! 優勝は―—!』

ドッと沸きあがる歓声。

吹き荒れる拍手の嵐。

押し寄せる仲間達の絶叫、涙、喜びの声。

私はキューポラから上半身だけを出してそれらを眺めながら、少しの間呆然としていたようだ。

車内の仲間に足を小突かれ、我に返る。

キューポラの縁に手をかけて車外へ這いずり出て、目の前でフラッグ車を撃破したティーガーTへ向かって、全速力。

ティーガーUの上面装甲から飛び降り、着地の衝撃で転びそうになり、それでも踏みとどまって、地面を蹴る。

勢いそのままティーガーTの装甲に手をかけて駆け上り、たった今、そのキューポラから姿を現した上半身に、正面から抱きついた。

「やった……やったのね、私達……!」
「うん……うん! そうだよ、エリカさん! 私達の力で、優勝したんだよ!」

感極まっているのは向こうも同じ。

震えた声と共に、普段の姿からは考えられない程に、力強く抱き返される。

「長かったわね……これでやっと、アナタの汚名を晴らせたのね。これでもう、誰にもアナタを逃亡犯だとか、腰抜けなんて言わせずに済むわ。隊長さん。何と言ったって、アナタは大学生戦車道大会優勝校の、隊長なんですから」
「私の事なんかどうでもいいよ。でも、これで……お姉ちゃんに胸を張って、報告できる……かな?」
「ええ。西住隊……まほさんも、家元も、きっとアナタの事を認めてくれるわ。だから……私達の街へ。熊本へ。帰りましょう、みほ!」
「はい! エリカさん!」

その時、私は喜びが占める胸の中で、微かな既視感を感じた。

「やだもー、えりぽんってば大胆なんだからぁ」
「あ〜! 逸見殿に先を越されました〜!」

が、戦車の内部から搭乗者たちの冷やかすような声が聞こえてきて、そちらに意識が傾いた。

「うっさいわよ! 茶化さないで!」

私は急に気恥ずかしくなって、両腕をみほの背中からそっと離し、肩においてそっと押す。

「みほ、みんな見てるわよ……!」
「うん……でも、ごめんねエリカさん。もう少しだけ……」
「……しょうがないわねぇ」

再び、肩からみほの背中へと腕を回す。

ぎゅうっと、私の身体を抱く腕にも力が入る。

……この光景を、私は夢で見たことがある。

あの時は、悪夢だと評したような気もするけど。

今は、正反対の気持ちになっている。

これは、私がずっと待ち焦がれていた。

親友が見せてくれた、最高の夢なのだから。

―――友情は瞬間が咲かせる花であり、時間が実らせる果実である。





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