過去ログ - P「雪美の教育方針について?」
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6:名無しNIPPER[sage]
2016/09/28(水) 13:50:09.88 ID:8hvf5nw4o
自室まで肩を貸してやり、ベッドに寝かす。着替えさせたり、汗を拭いたりしたほうがいいのだろうけど
さすがにそこまで出来ないので他の子に頼むことにする。しっかり休むんだぞと言い聞かせ、部屋を後に
しようと背を向けると小さく押し殺した泣き声が聞こえてきた。

「練習しなきゃ……トップになれない……」

もうじき行われるコンクールは四年に一度行われ、審査員と一般の客の投票でその年の優勝者が決まる。
多くの歌手や歌を得意とするアイドルにとっては一つの目標であり、優勝とは即ちトップになったと
言っても差し支えはない。それだけに競争率も激しく、参加することすら叶わない場合が多い。
彼女はその出場権をわずか十五歳で手にしたのだ。

俺は彼女のベッドの隣にしゃがむ。横になった彼女と目線が合う。顔は赤く、目には涙を浮かべていた。

「でも体を治さないとトップどころか出場すら出来ないぞ」
「このぐらい練習中に治る……だから……」
「だめだ。お前はどうしてそこまでトップに拘るんだ」
「……手……繋いで……」

言われた通り、彼女の手を握る。よく知った暖かく小さな手だ。

「約束……したから……」

彼女の少しずつ紡ぐ言葉が、彼女の握った手が、あの時の事を思いださせる。
迷わないように手を握って。彼女はそう約束してほしいと言った。
あなたの望み、私が叶える。彼女はそう約束をすると言った。

「あなたの望み……トップアイドル……シンデレラガールじゃないけれど……コンクールで優勝すれば
 トップだから……」
「雪美……」
「多分……チャンスは今年だけ……だから……」

彼女はずっとこの時のために練習して来たのだ。俺との約束を叶えるために。でも

「雪美。確かに俺はあの時トップアイドルを育てることが望みだった」
「……」
「でもな。それはもう叶ったんだよ」
「え……?」
「誰がなんと言おうと俺にとってお前は最高のアイドルだ」
「P……」
「だからもう無理をするな。握っててやるからゆっくり寝ろ」

雪美が少し微笑み、目を瞑る。涙が一粒枕へと落ちた。

「P……私を休ませたいから……ちょっと出任せ言ってる……」

痛いところを突かれた。嘘を言ったわけではないのだが、こういう雰囲気になればおとなしく寝てくれる
という目論見は確かにあった。

「Pのこと……わかる……魂……繋がってるから……。だから今は……休む……みんなが認める…………
 トップに……なる……ために…………」

そう言い終えると雪美は静かに寝息を立て始めた。俺は彼女が手を離すまでその手をずっと握っていた。

緊張した面持ちの彼女の手を握る。少し驚いたような表情でこちらを見た後、手を強く握り返してきた。
前に歌っているアイドルの曲はもうすぐ終わる。拍手が止み、司会者の紹介が終わったら、
あのスポットライトの当たるステージへ彼女は出る。

「今日この後」
「結果関係なく慰労会だろ? 大丈夫だよ。予定は入れてないから。
 しかしいいのか? 普通のレストランじゃなくて俺の家なんかで」
「いい」

司会者の紹介が始まる。それを聞いていると手を引っ張られて、思わず彼女のほうに体が傾く。
彼女は俺の耳元に顔を寄せて言った。

「今は私が歌うけど……夜はあなたが歌わせて?」


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