過去ログ - 【ひなビタ♪】霜月凛「やまびこ」
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8: ◆khUorI/jDo[saga]
2016/09/28(水) 19:00:13.20 ID:tZz1LPe6o
今や遠くの空に僅かにその色を滲ませるだけになった夕焼けが妙に恋しい。気付けば、街灯がチカチカとオレンジの光を放っている。
……そういえば、喫茶店が書いた歌詞にそんな一節があった。彼女が見たオレンジの街灯りとはこんな光景だったのだろうか。
オレンジ色とは、彼女にとって何を指すのだろう。オレンジ、橙、灯り、光明……。
もしかすると、私も喫茶店も洋服屋も、全く同じものに魅せられて、必死に追い縋ろうとしているのかもしれない。
だとすれば、その憧れが叶っているのはおそらく洋服屋だけだ。
自分を遠くに置いている私たちと違って、彼女はその光のすぐ隣に居場所を定めている――。
その時、ふと自分の思考に違和感を覚えた。私たちと違って……私たち?
向かいに座る喫茶店を見つめる。テーブルの上で組んだ手が、かすかに震えているように見えた。――同じ、だろうか。彼女と私は。
「ああ、もうすっかり暗いですね。灯りを点けないとお店が閉まっていると思われてしまいます」
ぼんやりと景色を眺めていた喫茶店はそう言うと小さくかぶりを振って席を立った。
照明のスイッチパネルへと歩いて行くその時、薄暗さに慣れた目が嫌なものを捉えてしまった。
さっきまでテーブルの上で組んでいた彼女の手の、赤くて、痛々しい、指の痕……。
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