過去ログ - 【ガルパンSS】西住隊長は天才だから!凡人の気持ちなんてわかるわけがないですよ!
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名無しNIPPER
[saga]
2016/10/02(日) 22:01:13.86 ID:hsNhL/EX0
先輩たちが引退して、新チームになってから、部隊編成も大きく変わった。
戦車道経験者が入学してくれたとはいえ、半数以上は未経験者なのだ。
また、受講者の数が増えるにしたがって新しい戦車が増強され、ウサギさんチームのみんなも、
それぞれ新しいチームで車長として頑張っている。
「お待たせ。じゃ、乗り込もうか。」
チームメンバーに声をかけ、茶色の車体によじ登る。
マシンの名前はW号戦車。エンブレムマークはあんこう。
これも、あの人から受け継いだ、私には不釣り合いなもののひとつだ。
***
全体練習後の自主練習も終え、くたくたになりながら帰宅したものの、また熟睡できないまま朝を迎える。
今日は幸い休日だ。布団の中で少しゴロゴロしていたが、ボォーと汽笛の音が鳴り響いたことで、入港が近いことに気づく。
正直、遊び歩く気分じゃない。でも、このまま家にいても同じことだ。気分転換をするにはぴったりの機会なのだと自分に言い聞かせ、
だらけたいと叫ぶ体を引きずって、何とか身だしなみを整えて家を出る。
特に行きたい場所も目的もない。
そういえば昨日、昔のウサギさんチームのみんなから一緒に遊びにいこうと誘われていたっけ。
戦車がケーキを運んできてくれる喫茶店に行くと言っていた気がする。
その場で断ってしまった手前もあり、逆に行きたくない場所はできてしまった、と苦笑する。
なんだか最近は、プライベートでみんなと顔を合わせたくないのだ。みんなが心配してくれているのはよくわかっている。
その気遣いは泣いてしまうほどうれしいし、甘えてしまいたくもなる。でも、いざその優しい空間に置かれたとき、
みんなの前でうまく笑える自信が、今の自分には無い。
考えがまとまらないまま、タラップを降りて、大洗港に立つ。
久しぶりの陸地なのに、なんだか足取りがふわふわしているような感覚。
「あ、あの。」
そこに。ふいにかけられた声に、ばっと前を見る。
「久しぶりだね。澤さん。」
髪をいじりながら、はにかんでいるその女性。
「その、えっと。なんだか会いたくなっちゃって。」
小柄な背丈に栗色の髪。柔和な表情と声。でも今日はそこに少し、張り詰めたものを感じる。
「ちょうど大洗に学園艦が帰港するって、聞いたから。」
今、世界で一番声が聞きたくて。話をしたくて。でも、絶対に会いたくない人が目の前に立っていた。
「西住、隊長。」
かすれて、ほとんど音にならない声が出る。
耳鳴りが始まり、喉がカラカラと乾いていく。
***
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