10:名無しNIPPER[saga]
2016/10/10(月) 20:53:18.77 ID:jQeMRsdb0
「……いや、だからそれは無理だろう」
「えーなんでさー! それくらいいいでしょー!?」
控室に未央ちゃんの声が響きわたります。
そんな未央ちゃんの目の前にいるのは、見るからに困りましたと言わんばかりに眉間にしわを寄せたプロデューサーさん。
未央ちゃんが「茜ちゃんタイムカプセル捜索隊」の発足を高らかに宣言してから数分。
ラジオの収録が終わって、いつも通り事務所から迎えに来てくれたプロデューサーさんを待ち構えていた未央ちゃんは、
プロデューサーさんが控室に顔を出すなり早速件の直談判をしたのでした。
……ところがと言うかやっぱりと言うか、プロデューサーさんはその話に首を縦には振ってくれなくて。
その後、同じような問答を何回か繰り返して現在に至ります。
未央ちゃんは何度言ってもプロデューサーさんが断るのにやっぱり納得がいかないようで、
ほっぺたをぷくーと膨らませて抵抗の意思表示をプロデューサーさんに見せています。
「プロデューサー、私からもお願いします! どうしても、タイムカプセルの中身を思い出したいんです!
……いえ、思い出さなければならないんですっ!!」
「ほらプロデューサー、茜ちんがここまで必死になってお願いしてるんだよ? それをムゲに断るのは大人の対応としてどーなのさ!」
そうしているうちに未央ちゃんと並んで、茜ちゃんもプロデューサーさんに詰め寄ります。
むむむむむー、とプロデューサーさんを気迫だけで徐々に壁際に追いやる未央ちゃんと茜ちゃん。
控室の中でもあの二人がいる空間だけ3、4℃くらいは気温が上がっていそう、それくらいの熱気を感じます。
「あーちゃん! あーちゃんからもプロデューサーに何か言ってあげてよ!」
「え、ええっ、私がですか?」
そろそろ私にも話が振られるかなぁ、と思っていたところにちょうど未央ちゃんが私のことを呼んだので、ちょっとびっくりしちゃいました。
「そうです藍子ちゃん! これは私だけの問題ではなく、ひいてはポジティブパッション全体の問題でもあるんですから!!」
「そうだよあーちゃん! わんふぉーおーる・おーるふぉーわん、私たちポジティブパッションのモットーだよ!」
そのモットーは今初めて聞きましたけど、確かに茜ちゃんのために何かしてあげたいという気持ちは私も同じです。
でもあんまりプロデューサーさんを困らせてしまうのもいけないし……
うーん、今の私は何をするのが正解なんでしょうか?
期待に胸を膨らませ、キラキラした無垢な瞳を私に向けてくる未央ちゃんと茜ちゃん。
そ、そこまでハードルが上がっちゃうと私は更に一体どうすればいいんでしょうか……
そんな二人の迫力にすっかりたじろいでいた様子のプロデューサーさんでしたが、そこはやっぱり私たちのプロデューサーさん。
プロデューサーさんから私に二人の気が逸れているうちに気を取り直すと、詰め寄っていた未央ちゃんと茜ちゃんの肩をそっと押し返しました。
それに気づいた未央ちゃんが再び物申そうとする前に、プロデューサーさんが諭すように話し始めます。
「とりあえず本田の話はわかったし、お前たちが日野の助けになってやりたいという気持ちもわかった」
「! それじゃあ……!」
「待て待て、人の話は最後まで聞くもんだ」
期待に目を輝かせながらプロデューサーさんを見つめる未央ちゃんと茜ちゃん、まるで待てをしている子犬みたいですね。
そんな目を向けられてばつの悪そうな表情を一瞬浮かべるプロデューサーさん。
やっぱり、プロデューサーさんも本当は私たちと同じ気持ちなんですね。
「……ただな、そんな時間をいつ、どうやって取るつもりなんだ? 今のお前たちが三人揃ってオフを取れる日があるか?」
「そっ、それを何とかしてほしいからプロデューサーにお願いしてるんじゃん!」
確かに、私たちも最近は色んなところでお仕事させてもらえるようになって、それはすごく嬉しいことで。
でもそれと同時に、三人で合わせてお休みを取ったり、一緒に遊んだりする時間はめっきり減っちゃいました。ラジオみたいに、三人一緒にお仕事することはありますけど。
三人で一緒に遊んだのって、最近だといつになるのかなぁ。私のライブ前にファミレスで集まって「藍子ちゃん会議」をした時くらいでしょうか。
プロデューサーさんがスーツのポケットから手帳を取り出し中を確認しますが、眉間のしわはなかなかほどけません。
「とは言ってもなぁ。再来月までのスケジュールはすっかり埋まってるし、その先もちょうど話が来てるところだからどこまで調整できるか……」
「再来月よりもっと先なんて待てないよ! せめて来週にしようよ!」
「無茶すぎること言うんじゃない、というかせめてって何だ」
「明日でもいいですよプロデューサー!!」
「お前は何を言ってるんだ日野」
いつも通り、だんだん掛け合いがコントみたいになってきました。観客はいつも私一人だけですけどね。
よくよく考えたら、アイドルがコントってすごく贅沢だったりします? うーん、でも事務所の笑美ちゃんや鈴帆ちゃんは普段からそんな感じだし……
普段あまりそういうことをしなさそうな人がやってると珍しく見える、とかそういう感じでしょうか。
と、そんな感じ(どんな感じ?)にプロデューサーさんと未央ちゃん・茜ちゃんの即興コントを私一人で鑑賞していたんですが、
今日はもう一人、お客さんが途中参加してきました。
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