11:名無しNIPPER
2016/10/10(月) 20:57:24.92 ID:jQeMRsdb0
「あらー、随分賑やかで楽しそうじゃない?」
「で、ディレクターさん! お疲れ様です」
控室入口の方から聞き慣れた声が聞こえてきたと思うと、そこにはラジオのディレクターさんがいました。
すぐさまディレクターさんの方に向き直して挨拶を済ませるプロデューサーさんに続くように、私たちもディレクターさんにご挨拶。
「もー畏まっちゃって。ここはオジサンとあなたたちの仲なんだから、そんなの気にしなくてもいいのよ?」
手をひらひらとさせて困ったわーと言いつつ、柔らかな笑顔を浮かべるディレクターさん。
このディレクターさんは、私たちポジティブパッションがユニットを結成した当初からとてもお世話になっている人なんです。
というのも、このユニットで初めて冠番組を持たせてもらったのが、さっき収録していたラジオ番組だったりします。
ディレクターさんは私たちのことをすごく気に入ってくれているみたいで、このラジオに限らず他のお仕事で色々お世話にもなったこともあるんですよ。
あまり詳しいことは聞いたことがないんですけど、プロデューサーさん曰く「この業界ではかなり顔の利く人」だそうです。
でも私たちからすると、ディレクターさんは気さくで面倒見のいいおじさんのような、おばさんのような? とにかく一緒にいてとても安心できる、そんな人です。
「いえいえ、これは最低限の常識として必要ですから」
「『下敷きの仲にも礼儀あり』と言いますしね!」
「茜ちん、それを言うなら『親しき仲にも礼儀あり』だねー」
「ふふっ、今日もバリバリ絶好調ね」
「そうですか!? いやー照れちゃいますね!!」
あはははは! と豪快に笑い飛ばす茜ちゃん。その様子を見ていると、こっちまで楽しくなってきますね。
「まあ、こうやってこの子たちが明るくていい子に育ってるのも、あなたの事務所の教育がしっかりしてる証拠ね」
「恐れ入ります」
「んもう、あなたももう少し固さを抜いた方がいいわよ? 堅物キャラもそれはそれでいいけどね」
「プロデューサーくぅん、私たちのことを見習った方がいいのではないかねぇ?」
「やかましいわ」
未央ちゃんがにひひと笑いながらプロデューサーさんの横っ腹に肘をぐりぐりしていたので、
プロデューサーさんは未央ちゃんの頭に手を載せ髪の毛をわしゃわしゃして対抗。
傍から見ているとまるで兄妹のようですね。未央ちゃんは実際にお兄ちゃんがいるそうですけど、おうちでもこんな感じなのかな?
しばらくその様子を笑顔で眺めていたディレクターさんでしたが、突然何かを思い出したようで、胸の前で両手をぱんと合わせました。
「と、そうそうこんな話をしに来たんじゃなかったわ。茜ちゃん、さっきラジオで話してたタイムカプセルの件なんだけど」
「は、はいっ! 私のタイムカプセルが、どうかしましたか?」
ディレクターさんからその話題が出てきたのは予想外でした。
茜ちゃんも私と同じだったようで、答えたはいいもののその次が何か全く見当がつかないといった表情をしていました。
そんな中、ディレクターさんの質問に期待していの一番に口を開いたのが未央ちゃん。
「もっもしかして、ディレクターさんが茜ちんタイムカプセル捜索隊のスポンサーをやってくれるとか!?」
「お、察しがいいわね未央ちゃーん。スポンサーとまでは言わないけど、大体合ってるわよー」
未央ちゃんの期待に応えるように、ディレクターさんの言葉は続きます。
「ラジオの企画として、茜ちゃんのタイムカプセルを使えないかしらと思ったのよね。
ついでにタイムカプセルを三人で掘り起こしに行くところもロケ撮影ってことにしちゃって、WEB配信でもしようかなって」
「さ、三人でですか?」
やっほーい、とディレクターさんの話を聞いて飛んで喜ぶ未央ちゃんと茜ちゃん。いつの間にか私も混ざって三人でわーいわーい。
その隣で、プロデューサーさんがディレクターさんに詳細を聞き出そうとしていました。その表情はちょっと訝しげ。
「ディレクターさん、その、お話はありがたいのですが……少し見切り発車すぎるのでは?」
「あら、どういうことかしら?」
「日野のタイムカプセルを企画に使うと言いましても、そもそも企画として成り立つのかどうか……」
「それを今から考えるんじゃないのー。それに、話題性なら割とあるみたいよ?」
そう言いながらディレクターさんが私たちとプロデューサーさんに見せてくれたのは、タブレットの画面。
そこには某呟きWEBサイトで今トレンドになっているワードがずらりと並んでいました。
そのリストを眺めていると、中に「タイムカプセル」のワードが入っていました。しかもそのワードがよく呟かれるようになったのは、私たちのラジオの放送真っ最中。
「茜ちゃんのタイムカプセルが気になったっていう人がこれだけいたってことですよね、これ」
「そうなのよ藍子ちゃん。茜ちゃんの影響力もなかなか侮れないわよー?」
「な、何だか照れくさいですね!」
両手を頬に当て、なぜか酸っぱいものを食べたような表情をする茜ちゃん。
「ともあれ、これなら企画としても最低限の強度はあると見ても問題ないわね。
残りの細かい話はこれから考えることにしましょう。プロデューサー君もそれでいいかしら?」
「……わかりました。では後ほど打ち合わせをさせていただくということでよろしいですか」
「うんうん、OK。それじゃあ三人とも、良い画期待してるわねー」
そう言いながら、控室を出ていくディレクターさん。その表情はとても満足げでした。
ディレクターさんがいなくなったところで、プロデューサーさんは自分の鞄の中を物色しはじめます。仕事道具を探してるんですね。
「それじゃあ俺はこれから打ち合わせの調整に行ってくるから、お前たちは先に事務所に帰っておいてくれ」
「りょーかいっ」「はいっ!!」「わかりましたー」
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