過去ログ - 天の原ふりさけ見れば春日なる...
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38: ◆cDyTypz3/.[saga]
2016/10/04(火) 23:34:23.00 ID:NypoJ6GT0
爆雷のことを失念していたとは、何とも滑稽な話だ。今回の作戦の準備期間も短すぎるのもその由だろう。いつもなら一週間以上はあるはずの時間も、その間幾度となく行われる図上演習もなしで、一日程度で練り上げられた。

提督だけのせいではない。いつも了解してばかりの私にも責がある話だ。

今にして思えば、かなり急拵えの作戦なのである。

扶桑「・・・」

その急拵えという響きから漂う嫌な予感が、扶桑を不安にさせている。

まだなにかよくないことが起こる。その確信が扶桑にはあった。如何に弱腰と罵られようとも、この予感は消えない。

・・・大体、なぜ大和さんは敵の動向をこちらに教えてくれないのか。深海棲艦の仲間であるのならそれぐらいできて当然のはずなのに。

真剣に作戦立案に携わろうとする表情の大和が、私達を陥れようと画策している顔に見えてならない。

提督が決めたのならと、場の不和を招かないためにも最初はそう言ったが、敵だった過去は消えないのだ。

しかし、今になってやっぱり疑わしいなどと意見を翻すわけにもいかない。

扶桑「(今疑っても仕方ありません)」

頭のなかを一度振り払うと、扶桑は作戦会議に参加していった。



〇四四四。

顔を上げて壁にかかっている時計を見たらとんでもない時刻だった。

提督「ふざけやがって、縁起でもない。たかが時間がゾロ目なだけじゃねぇか。むしろ運がいいって喜んでやる」

躍りでもやってやろうかとむしろムキになって、上げかけた腰を下ろした。

あと八時間で舞鶴が到着する。そう思うとささくれだった心も冷や水を浴びせられたように落ち着いてしまう。落ち着くというよりは、落ち込むという方が当たっているかもしれない。

それにしても八時間は長い。一日千秋とはまさにこの事か。

提督「くっそ」

八時間が途方もないぐらい長く感じる。

護衛艦があと何時間で着くと思う度、電信所へ足が向きそうになるのを必死にこらえる。

もちろんその無線の先は今出撃している三艦隊全てだ。しかし、無線を試みた所で封鎖中であるから出てくれる訳はないのはわかっている。

それでも声を聞きたいと思ってしまうのだ。

扶桑、赤城、そして五月雨の健在な声を聞きたいと思ってしまう。

提督「クソっ」

太平洋じゃなにもできない。

日本海側なら、製油所に何かしら命令を送り込むとかして彼女たちへ最低限の援護ぐらいできるのに。

太平洋では、なにもしてやれることがない。

何かしてやりたいのに、何もできない。

何かできるんじゃないかと心のどこかで思っても、どう考えてもやはり何もできない。

歯痒い。歯痒すぎる。

自分の腕時計の音と、壁時計の音がやけに大きく室内に響く。

提督「クソしかいってねぇ・・・」


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