過去ログ - 時子様「豚とダンス」
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20: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:38:19.15 ID:7ab73rSh0
 ――さて。
 嵐は去ったことだし、そろそろ豚のところへ行ってやろうかしら。
 ここで待っていても現れないようだし。本当に気が利かない――、

「あら」

 その豚の姿が、柱の陰に見えた。何でこそこそ隠れてるのよ、あの豚。
 はあー、とため息をつき、近付く。

「……約束の1分はとっくに過ぎてるけど、まあ良いわ。行くわよ、豚」

 豚の横を通り、そのまま自動ドアの方へ。ガラスごしに黒長いリムジンが見えていた。

「時子様」

 背後から届く声が遠い。

「なによ?」

 振り返ると、豚は未だ、柱の陰に立ち尽くしていた。

「どうして、言い返さないんですか」

「何? 貴方、見てたの?」

「どうして、俺を叱らないんですか」

「――叱って欲しいの? ホント、哀れな豚ね」

「時子様……どうしてですか?」

「……ちっ」

 いつになく真剣な表情で言葉を放つ豚が、心底不快だった。


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