29: ◆9HQtX1uR2o[saga]
2016/10/04(火) 23:54:55.33 ID:7ab73rSh0
――あぁ、なんて考えていたら、あんなところに。
通路の先を行く、アイドルにしては大柄な背中。
それに、この私から声をかけてやった。まったく、光栄に思ってほしいものね。
「貴女、向井拓海だったかしら?」
「ああん? ……おぉ、財前さんか。今日は頑張ろうぜ」
そうやって笑う乳牛に向かって、私は言葉を叩きつける。
「ねえ、この前の話だけど、あれ、やっぱり私は悪くなんてないわね」
「突然なに……て、おお、オーディションの時の?」
「忘れたとは言わせないわ。ねえ、貴女は『他人の邪魔をするな』って言ってたけど、笑わせるわね、凡人風情が。この私の足を引っ張っているのは、貴女たちの方よ」
「ああ?」
笑顔を消す向井拓海へ、言葉を続ける。
「私は女王よ。凡人がそもそも適う相手じゃないの。私が他人の邪魔をして、何が悪いのよ? アイドル界、そんな甘いものじゃないでしょう? 今日のステージを統べるのもこの私、時子様。下々にこの私の邪魔はさせない。並のアイドルは、精々ステージの端でおままごとをしていると良いわ」
まくしたてて、人差し指を突き付けてやる。
「……はっはっは」
向井拓海は再び笑い声を上げたけれど、そこには怒気をはらんでいた。
「良いぜ、買ってやるぜ、その勝負。なあ、こらあ!」
「アーッハッハ! 私と対等ですらないとも気づかずに、哀れな乳牛ね!」
40Res/29.48 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。