過去ログ - 水本ゆかり「清澄」
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19:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:32:45.74 ID:snFV7Fpq0

 あの一瞬。

 先のことを考えた、あの一瞬の内に、私は何かを取りこぼしてしまった。
そんな気がしてならなかったのです。

 ゆるやかに減速して、バンは右折しました。
途端に、もう引き返せない――そもそも、引き返したところでそれを拾えるわけでもないのですが――そんな風に思えて、私はことさらプロデューサーさんを呼び止める気になれませんでした。

 胸には林檎を切るような、しくしくと刺さる音が響いていました。
その痛みを逃がすように、そっとため息をついて、私は眠るように目を閉じました。

 何がそんなに痛むのか、私にはわかりませんでした。
気にも留めませんでした。

 しかし数日が経ってその正体が明らかになったとき、私は知ったのです。

 これこそが、きっかけだったのだと。




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