12: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:08:15.37 ID:O4qi00qi0
テレビ局での打ち合わせを終えてプロダクションへ戻る頃には、日は完全に落ちていて、定時もとっくに過ぎていた。
夏もそろそろ終わりだというのに、暑さはまだまだ居座ろうとしている。ロビーに入るとクーラーの涼しさが心地よかったが、汗のせいですぐに肌寒く感じた。
この仕事は業種柄、勤務時間にムラがあって、会社はまだまだ営業中。良し悪しの判断は捨て置こう。考えても、辞める気はないので意味はないのだ。
ひとりエレベーターに乗り込み、行き先ボタンを押す。静かに動き出して、何事もなく目的階に到着。プロデュース部のあるこの階は、あちこちで声が聞こえて活気がある。エレベーターを降りると、通りすがった別なプロデューサーに「おう。お疲れ」なんて声をかけられた。迎え入れられている気がして嬉しくなる。
いい気分のまま、第三プロデュース室のドアを開ける。
「…………」
見てはいけないものを見た気分。ぼくは静かにドアを閉めた。
ええと、何事かな。左手の腕時計を確認して、首をひねる。二十時。今日のヘレンさんの予定はレッスンだけ。それもとっくに終わっている。
幻覚かと思ってもう一度ドアを開ける。ぼくのデスクは、珍妙なポーズをとったヘレンさんに占拠されていた。ヘレンさんは椅子の上に膝立ちになり、グラビア写真のように胸を張り、くびれを強調したポーズのまま、ゆっくりと回転していた。回転が止まると、後輩が丁寧に椅子を回していた。意味不明だった。
25Res/29.67 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。