16: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:14:32.55 ID:O4qi00qi0
「塩二つ!」
「だそうです、お願いします」
カウンターに通されて、並んで座る。ヘレンさんは水の入ったコップを持ちながら、愉快そうに笑った。
「一度やってみたかったの。どう? 様になってたでしょう」
「そういうのは常連になってからやってくださいよ。というか、収録近いけどラーメン大丈夫なんですか?」
「ふふっ、私が調整してこなかったとでも言いたいの?」
「自主練もほどほどにと言っているのです」
「……あなたは細かいところが玉に瑕だわ」
「世界レベルを相手にするんですからね、細かいくらいがちょうどいいんですよ」
「余計な気は使わなくていいわ。心配なんてするだけ無駄よ。私はなんでもこなしてみせるわ。わかってるでしょう?」
さて、どうやら見透かされているらしい。たぶん、そういうことだろう。
「順序があります。そして比重も。目的のためには進むべき道があるのです。いまは余計な色をつけたくない」
「私はバラエティでも構わないわ!」
「バラエティを馬鹿にするつもりはありませんが、イメージとして障害になることもあるのですよ。まずは足場を固めましょう。世界に飛び出すための足場を」
日本の笑いは世界に受け入れられない。文化の違いであり、言語感覚の違いが大きいから。だとしたら、バラエティ方向に進出していっても実りは少ないだろう。
必要なのは世界共通の評価基準のある技術。たとえば歌やダンス、演技などなど。
ヘレンさんにはポテンシャルが備わっているのだ。あとは機会だけ。海外にも評価される技術をさらに磨き、そして披露する場を用意する。
それがぼくの仕事であり、ヘレンさんのプロデューサーとしての使命だ。
ヘレンさんは珍しく考えるように黙ってしまった。
それからすぐにラーメンはやってきた。さっぱりした塩ラーメンは、ヘレンさんオススメなだけあって美味しかった。
25Res/29.67 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。