5: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 17:56:16.73 ID:O4qi00qi0
燦々と降り注ぐ陽光は、時折吹く熱気に近い風に揺れる、青いプールに拡散してきらきらと輝やかせた。
夏らしい、絶好の撮影日和。塩素の香りに懐かしさを覚えながら、奈緒は競泳水着、智香にはスクール水着を着てもらって撮影は始まった。
「奈緒ちゃん可愛いですね!」
パラソルを用意して日陰を作り、俺と智香、後輩と三人で奈緒の撮影を眺めていた。他のアイドルたちは順番が来るまでクーラーの効いた教室に待機してもらっている。
「ああ、いい感じだな。やっぱり普通の水着と違った魅力があるよなぁ」
「あー! なんかイケナイ視線ですよそれ! それにほら、アタシにだって引き締まったくびれと太ももあるんですから!」
「ん、智香も十分魅力的だよ」
満足そうに智香は笑う。ちょっと背徳的な感じがいいですね。口にはしない。
しばらくして奈緒の撮影が終わる。ため息混じりにこちらへやってきた奈緒は、智香に向けて軽く手を挙げた。
「次、智香だって」
「うん、行ってくるね」
「あっ、待って」
歩き出そうとする智香を、俺は引き止める。これがなければ始まらないだろう。閉じて置いていた段ボールを開封し、中から赤いランドセルを取り出して、智香に渡した。
「これ背負って」
「はい?」不思議そうに首をかしげる智香。「えっ、あのランドセル?」
「だから他人事じゃないって言ったのに……」
呆れる奈緒を無視して、俺は微笑む。
「いってらっしゃい」
「ええぇぇ!! 聞いてませんよ!?」
カメラマンから名前が呼ばれて、智香は混乱したまま歩いて行った。困惑と羞恥から普段とは打って変わって自信なさげな智香は、いつもと違う魅力に満ちていた。
「後輩よ、夏はいいな」
「はい、夏はいいですね」
「はあ……」
夏のきらめく水面に、赤いランドセルはよく映えていた。
「プロデューサーさん!! 恥ずかしいですよー!」
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