8: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:00:38.11 ID:O4qi00qi0
謝っても梨沙はそっぽを向いて取り合ってくれない。どうしたものかと思索していると、輿水さんは仕方ないですねと呟いた。冷や汗が背中を伝う錯覚を覚える。
「その書類ですよね? 見せてください。第三者としてボクが判断しますから」
膠着した話にそろそろ疲れてきたらしい。輿水さんは呆れたようにいって書類を指差した。恐れていた展開だ。しかも梨沙まで、そうね幸子に判断してもらいましょ、と乗り気ときている。
「いや、うん、大丈夫だよ。そこまでしてもらわなくて」
「ここまできたら同じですよ」
抵抗虚しく、ひょいっと書類は攫われていった。何事も諦めが肝心だ。自分に言い聞かせて、ため息を吐いた。
書類はA4用紙六枚からなる次の撮影の衣装案で、三種類のデザインが描かれている。パパさんと梨沙の魅力を熱論したその足でデザイナーと打ち合わせをした結果、俺の元に上げられてきたのはほぼ水着と言って差し支えのない、露出しかないデザインだった。
なにを話したのか憶えてないあたり、酩酊状態だったのかもしれない。少なくとも素面でこの衣装案を通したのだとしたら、俺の頭はおかしい。
一枚二枚と用紙が捲られるたび、輿水さんの表情は引きつっていった。気持ちはわかる。俺も初見では同じ表情をした。
六枚すべてに目を通した輿水さんは、厳しい口調で言う。
「……アウトですね。いえ、むしろよくこれを通そうと思いましたね。というか、よく本人に見せようと思いましたね。そのメンタルの強さだけは評価しますよ」
めちゃくちゃ辛辣だった。いや、まったくもってその通りなんだけど。
「だから誤解なんだってば。あくまで参考に聞こうと思っただけで」
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