過去ログ - 吉岡「サザエさんみてーな髪型の高校生に携帯電話パクられて10億の取引パーになった」
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1:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:21:08.98 ID:9w8SWOc1o

私の名は吉岡という。



M県S市杜王町に暮らすしがない会社員である。

いや……正確には会社員だった。


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2:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:22:57.43 ID:9w8SWOc1o

全ては一瞬の出来事だった。


私は社長直々に10億円の取引を任されていた。
以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:25:55.22 ID:9w8SWOc1o

取引はもちろんご破算となった。


もちろん私とて携帯電話を盗まれたことを主張したが、
以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:27:52.28 ID:9w8SWOc1o

会社ももちろんクビになった。

上司からは罵られ、同僚からは呆れられ、女性社員からは冷たい目で見られ――
もし仮に解雇を免れたとしても、私に居場所はなかっただろう。
以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:29:57.46 ID:9w8SWOc1o

こんな私に家族も愛想を尽かした。


元々妻と子供にも、半ば月給納入マシーンとしか見られていなかった私だが、
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:31:54.28 ID:9w8SWOc1o

再就職先を探すも、この年齢で、しかも前職を懲戒解雇されているので、そう簡単には見つからない。

面接させてくれるところすら少ない。

以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:33:58.06 ID:9w8SWOc1o

二人組の高校生が歩いてきた。
体格がよく、肩で風を切って歩く、いかにも不良といったコンビである。

万が一にも絡まれてはかなわないと、私は目をそむけようとする。
以下略



8:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:36:33.66 ID:9w8SWOc1o

相手は二人、眼光は鋭く、体も大きい。
取っ組み合いの喧嘩などしたこともない私なんかが太刀打ちできる相手ではないことは明白だった。

だが、この時の私はそんな計算をするどころではなかった。
以下略



9:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:38:46.54 ID:9w8SWOc1o

私は携帯電話を盗んだ方の高校生に掴みかかり、怒鳴りつけた。


「お前っ……お前のせいでッ! この吉岡はッ! お前のせいッ! おまっ……お前ェッ!」
以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:41:04.70 ID:9w8SWOc1o

左頬に強い衝撃が走った。
グーで殴られたのだ。

口の中が切れたのか、私の舌は血の味を感じ取った。嫌な味であった。
以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:42:30.52 ID:9w8SWOc1o

「行こうぜ、仗助ッ!」

「お、おう」

以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:44:48.12 ID:9w8SWOc1o

二人組が立ち去ってから、どれくらい時間が経っただろうか。

この時、私が抱いたのは彼らに対する怒りではなく、自分への情けなさだった。

以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:46:37.20 ID:9w8SWOc1o

近くにあった雑木林に入った私は、首を吊ることにした。
ポケットの中にあった就職活動に使っていたネクタイ、首を吊るのにはちょうどいい。

私は適当な太い枝を見つけ、ネクタイを固く結びつけ輪を作ると、その中に首を入れた。
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:47:54.23 ID:9w8SWOc1o

しかし、私は死ななかった。


「うう……」
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:50:41.77 ID:9w8SWOc1o

「おっさんの様子が尋常じゃあなかったからよォ〜、
 やっぱり気になって引き返して後をつけてたんだが、正解だったぜ!」


以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:52:54.09 ID:9w8SWOc1o

「なんで、私を助けてくれたんだ……?」

「なんでっていわれても……説明しようがねぇーっスよ。
 強いていや、誰かが死のうとしてるのを見過ごしたら後味悪くなるからってとこっスかね〜」
以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:54:59.54 ID:9w8SWOc1o

「オレみたいな若造に話したところで、あんたが『死のうとした理由』が解決できるとは限らねえけどよォ〜。
 話せば楽になるっつーこともあるし……」

「いや……なんでもない……なんでもないんだ」
以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 20:58:13.16 ID:9w8SWOc1o

「一つだけ……質問いいかな?」

「なんスか?」

以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 21:01:18.24 ID:9w8SWOc1o

それに、こうも思った。

携帯電話を盗まれてからの私に、彼ほどのガムシャラさはあっただろうか?

以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 21:03:56.93 ID:9w8SWOc1o

「あの……考え込んでるみたいっスけど、どうしたんスか?」

「いや……大丈夫だ。私はもう、大丈夫だ」

以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2016/10/20(木) 21:05:46.59 ID:9w8SWOc1o

「元気になってくれたみたいでよかったっス。じゃあオレはこれで」

「ありがとう、仗助君」

以下略



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