14: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/10/21(金) 06:30:41.34 ID:KNNRsk+y0
二人が今いる道路の傍に、民家はただの一軒も見当たらない。
ほんの少し前ならば(丁度、二人でタクシーを降りた辺りだ)、何軒かの住宅が道沿いに並んでいはしたが……。
今、二人の周りにあるのは延々広がる田んぼの他に、道路脇に続くなだらかな斜面をうっそうと覆う雑木林だけ。
そんなまるで人気の無い道に夜遅く、営業している一軒の屋台。……誰がどう見ても、怪しすぎる。
「あ、あの、あの、楓さん?」
「屋台を見つけて、やったーい」
「ええ、ええ、分かりましたから楓さん」
「田舎の酒と、いーなかに」
「か、か、かっ、楓さんってば!」
思わず、大声で叫ぶように彼女の名前を呼んでしまった。
そのプロデューサーの大声に、辺りがシンと静まり返った。
あれだけ吹いていた風の音がピタリと止むと、ススキも、虫の鳴き声も、
それまで耳に聞こえて来ていたあらゆる音が、完全にどこかへ消えてしまった。
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