17: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/10/21(金) 06:35:20.71 ID:KNNRsk+y0
「このまま道を引き返し、回り道しようものなら今晩の晩酌はお預けです。で
も、屋台を素通りして宿に戻っても、待っているのは缶のお酒と肴代わりのお菓子だけ」
中指をゆっくりとたたみながら話す彼女の両目には、「絶対に飲む」という、強い決意が見て取れた。
……これが、困るのだ。
普段は柔和な態度で人に合わせることもできるのに、こと自身の好きな物……
特に、酒と温泉が話に絡むと、信じられない程の頑固さを発揮する彼女のこの一面が。
「……嫌ですよ、俺は」
「なら、プロデューサーはお先にどうぞ。私は、ちょこっとだけ覗いて帰りますから」
意地悪そうな、からかうような楓の微笑み。
断れないことを知っていて答えを求めるそのやり口は、
本当に先ほど、道端にしゃがみ込んで駄々をこねていた女性と同じなのかという程の変わりようだった。
こうなってしまっては、そもそも勝負にすらならない。
ご機嫌を損ねて明日の仕事につかえるぐらいなら、
ここは大人しく、彼女の言うことを聞き入れる方が賢明か……。
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