過去ログ - 高垣楓「夢と現を、月見で一杯」
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2: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/10/21(金) 06:10:12.96 ID:KNNRsk+y0

 楓がくすくすと笑いながらそう言うと、彼女の前を歩いていた、プロデューサーと呼ばれた男が振り返って聞いた。

「何です、それ?」

「ふふっ……今の私の、気持ちです」

 二人の間を吹き抜けた夜風が、去り際に近くの山の雑木林をガサガサと揺らす。

 闇を照らすための街灯もポツンポツンとしか無い田舎道は、月明りのお陰か、不思議と暗すぎるということもない。


 ――……高垣楓は、アイドルである。実年齢は二十五歳。
 それでも十分学生として通用する童顔を、ふわりとしたボブカットで飾り、
 猫のように左右で色の違う瞳、左目の下にポツリとついた泣きぼくろは、時に大人の色気を醸し出す。

 元モデルということもあってか、スラリと細いプロポーションと、
 女性にしては高い身長を、今はゆったりとしたノーカラーコートの中に隠している。


 そんな、いわゆる「美人」と分類しても差支えのない容姿を持った彼女であったから。

 その穏健とした性格と合わせて初めて楓と会う人間は、基本的に彼女のことを
「上品で、落ち着いた雰囲気の素敵な女性」と評価する。

 だがしかし、少しでも彼女と付き合いのある人ならば残念そうに肩をすくめ、
 口を揃えてこう言うのだ……「あれで洒落さえ口走らなければ、完璧なのに」と。


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