41: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/10/23(日) 09:42:32.25 ID:uhMwzG8T0
「これも月見酒には、敵んめ」
「月見酒」
「んまいのよォ、月見酒はさァ」
そうして老人が「んまいし、素敵なのよォ」と、カウンターの上に磨き終わったお椀を置いた。
漆塗りの、上品なお椀が四つ。
そこに老人が黒蜜の入っていた甕とは別の甕を傾けて、
透き通った液体をトポトポと注ぎ込んでいく。
「飲んでみんかい? 月見酒」
――……改めて確かめられるまでもない。
ニンジン酒なんて変わったお酒を出す屋台、その店主が勧める「素敵で、んめっ」な月見酒……
一体全体どんな酒なのか、興味が湧かないハズが無い。
「勿論、いただきます」と笑顔で答えながら楓は差し出されたお椀を受け取ると、
そのまま中に入った液体を口にしようとして、「ああ、違ん!」と老人に慌てて止められた。
「何が、違うんですか?」
不思議そうに小首を傾げた楓に、老人が屋台の外を指さして言う。
「月見酒は、月を飲む。外で飲むお酒なのよォ」
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