43: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/10/23(日) 23:57:26.16 ID:uhMwzG8T0
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月が、出ていた。
黄色く欠けの無い月は、先ほど見た時よりも、さらにその輝きを増しているかのようにも見えた。
「いい、月だんなァ」
屋台から外に出た四人を、柔らかな光で月が照らし出す。
老人の指示通り、液体によって並々と満たされたお椀を手に、
楓たちはシンと冷たい、夜の空気の中に立っていた。
「こんな月の夜は……ん、良い月見ができんのよォ」
老人が、手にしたお椀を見せて微笑む。白い息を吐きだしながら、楓が聞いた。
「それで……月見酒とは?」
「お椀に、月を浮かべんの。ウロウロっとして、丁度いい場所を探しなァ」
楓からの問いかけに老人が、トンボを捕まえるように、指をクルクルと回して答える。
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