44: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/10/24(月) 00:00:49.33 ID:s0PoLOR90
「どういうことですかね」
プロデューサーが、楓の隣にやって来て囁いた。
とはいえ、楓にもサッパリ分からないのだ。分からないことは、答えようもない。
お椀を両手で持ったまま、どうしようかと辺りを見回すと、老人と少女の二人がウロウロと、
お椀を持ったまま屋台の周りをあっちへ行ったりこっちへ来たりしているのが目に入る。
「場所って、言ってましたよね」
「ええ。それから、月を浮かべるとも」
お椀の中で揺れる水面に、ゆらゆらと空の星たちが、
まるで散りばめられた宝石のように揺れている。
そっとお椀を動かせば、当然そこに映り込む星たちも、また違う星になって。
「水の上に、月を映せばいいんでしょうか?」
揺れる水面を覗き込みながら呟いた楓の横顔を見ながら、プロデューサーが「できますかね?」と聞く。
「でも、二人はそのつもりみたいです」
顔を上げた楓が、辺りを行きかう老人たちを目で追った。「多分、できるんじゃないでしょうか」
「多分って……」
「じゃあ、出来ます。あの二人がしてるんです……できそうな気が、しませんか?」
「星はともかく、小さなお椀に月なんて映りますか?」
「だから場所を、探すんでしょう? 丁度いい、その場所を」
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