45: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/10/24(月) 00:04:05.45 ID:s0PoLOR90
プロデューサーを見つめる楓の目は、今や好奇心でらんらんと輝いていた。
いや……単に屋台で飲んでいた、酒の酔いが回ってきているだけかも知れない。
「……分かりました。そうしましょう」
だがそれを指摘したところで、彼女は場所探しを止めたりなんてしないだろう。
プロデューサーは仕方がないとため息をつき、月を映せる場所を探して、歩き出した楓の後に従った。
それから、四人で屋台の周りをウロウロとすること十数分。
いい加減に、夜風によってお椀を持つ手も冷えてきた頃だ。
「プロデューサー!」
広場の隅、小さな用水路が流れている傍に立ち、こちらへ来いと楓が手招きをする。
「どうしました?」
プロデューサーが、赤くなった鼻を啜りながら近づいて行くと、老人と少女もやって来た。
「ほら、見てください!」
楓がそんな三人に向けて、宝物を見つけた子供のように無邪気な笑顔でお椀を差し出した。
「アンタァ、いーい月だよォ」
老人の言葉に、プロデューサーも思わず頷いた。
楓の白い指が支えるお椀の中には、まるで卵の黄身を浮かべたような、
平たい団子を浮かべたような、ぷっくりと膨らむ月があった。
ふと、プロデューサーが夜空を見上げる。
「ホント、いーい月だよ」
少女がそんなプロデューサーを、可笑しそうに見つめて笑う。
それは夢か現か幻か――……夜空にあるハズの月が、今は確かに楓の持つ、星空の海に浮いていた。
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