46: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/10/24(月) 00:06:02.69 ID:s0PoLOR90
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「ささ、グイッと飲んめェ」
老人に勧められるままに、楓がお椀の中の液体を口に含む。
一口、二口……楓の喉がこくこくと波打つ度に、彼女の瞼は惚けるように落ちていく。
そしてみるみるお椀の中身を減らしていくと、
最後にはグイッと一息、中に入っていた月を飲み込んだ。
しばらくの静寂。口元からお椀を離した楓が、肩を上下させながら大きく一つ息をつく。
「んめくて素敵な、いーい酒だったろォ?」
ニヤリと笑う老人に、楓が頬を紅潮させて小さく頷いた。
「とても……とても素敵な、味でした」
そうして少し興奮しているのか、彼女はプロデューサーの方を振り向いて、
「プロデューサーも、是非どうぞ」と手招きをする。
「アンタも、こっちに立ちなァよ。月が空にあんうちは、月見はいくらでもできんねェ」
「いや、しかし……」
「ちょっとちょっと、おにーさん!」
断るために上げた腕を、不意に少女にとられ、プロデューサーが狼狽える。
「月見屋台に来て、月見しないで帰るなんてさ。
そんなの勿体ないよって。なんならあたしも、一緒に飲んであげよっか?」
からかうように自分を見上げる少女の手を払いのけることもできずに、
プロデューサーがズルズルと、彼女に引っ張られるようにして楓たちの待つ場所まで近づいて行く。
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