過去ログ - ウルトラマンオーブ　【宵と暁の魔王】 -SS速報VIP

過去ログ - ウルトラマンオーブ　【宵と暁の魔王】

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1:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 01:56:20.84 ID:IkfmzLR50

（プロローグ）

　午後六時十一分。駅から出た道尾賢介は自宅への帰路についていた。

　八月も中旬の十四日、そろそろ秋への下り坂に差し掛かるべきだと思うのだが、一向に猛暑は収まる気配を見せない。
　夕方でも街中に籠る熱気でシャツが汗ばむ。道尾はネクタイを乱暴に解いて鞄に突っ込んだ。

　これから家へ帰る。その事実が彼を苛立たせていた。
　家には家族がいた。二か月前浮気が発覚した妻と、自室に引き籠っている十七の息子が。

　同じ大学で過ごし、二十五で結婚。翌年には妻が妊娠、一人息子が生まれ、草加に一軒家を建てて移り住んだ。
　あの頃は幸せな未来が見えていたはずなのに。一体何が彼を狂わせたのだろう。
　不況による無情なリストラか。息子が小学校で同級生から受けた虐めか。それとも職探しで家庭を顧みなかったことなのか。
　何にせよ夫婦が三十代半ばに差し掛かる頃には家の中は冷え切っていた。そして息子は部屋から出なくなった。

　はあ、と息を吐いた。毎日のように足取りが重い。
　自慢の一軒家は憩いと安寧の象徴のはずだったのに。帰るべき場所のはずだったのに。
　まるで――そう思って、道尾は空を仰いだ。

　――まるで、この空のような。

　西に浮かぶ雲は落暉を浴びて燃え上がるような赤に染まっていた。
　瑠璃色に落ちかけた空に浮かぶ紅蓮は、まるで、地獄のような退廃的な色彩。

　そうだ。――俺は、地獄へ帰るのだ。

　この世には既に帰るべき場所などない。あるのは鬼が支配している地獄しかない。
　血のように燃える太陽の最期の姿を見ながら、彼は痛切にそう思った。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 01:57:32.62 ID:IkfmzLR50

　家の前に辿り着いた時には日は完全に没していた。
　西に残る朱色も薄まり、血の一滴が混ぜ込まれたような濁った夜色が時の流れに抵抗している。

　逢魔が時という言葉がふと頭を過ぎった、その時だった。

3:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 01:58:26.24 ID:IkfmzLR50

※ウルトラマンオーブのSSです。

※地の文があります。

4:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 01:58:59.25 ID:IkfmzLR50

（一）

ナオミ「やっぱり夏はソーメンよね～♪」

5:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 01:59:27.10 ID:IkfmzLR50

ガイ「……何？」

　――が、そのノイズのような音を耳にしてガイは突然低い声を上げた。

6:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 01:59:59.47 ID:IkfmzLR50

ジェッタ「大変だ……大事件だよキャップ！」

ナオミ「そうね。あれは怪獣？」

7:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:00:27.62 ID:IkfmzLR50

ガイ「っ！」

　一方、事務所を抜け出したガイは路地裏に回っていた。
　オーブリングを取り出す。構えると、リングが淡い光の粒子を放った。

8:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:00:57.21 ID:IkfmzLR50

　埼玉県草加市松原は夜の静寂を取り戻していた。

　家屋の電気は灯っているが、笑い声も話し声もない。
　そんな異様な家々がひっそりと立ち並び、街路樹のイチョウも花壇のツツジもまた沈黙を守っていた。

9:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:01:36.61 ID:IkfmzLR50

オーブ「――ジュアッ！」

　オーブが右腕を掲げ上げる。胸の前に構えた左腕を水平に開くと、彼の身体の前に光の輪が出現する。

10:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:02:11.10 ID:IkfmzLR50

オーブ「――テャッ！！」

　攻撃と共にオーブの身体の赤い部分が光る。
　力を借りているティガの能力で、攻撃力を強化したのだ。

11:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:02:53.48 ID:IkfmzLR50

　それを当てられたオーブが逆側に身体を捻り出した。
　まるでビデオを逆再生しているかのように綺麗に先の動作をなぞり、最後には元通りに着地した。

オーブ「ジュアッ……！？」

12:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:03:23.74 ID:IkfmzLR50

オーブ「ジュアッ！」

　今度はレバーを三回引く。エネルギーが槍の先端に集う。それを手に怪獣に突進する。

13:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:04:00.91 ID:IkfmzLR50

怪獣「――――――」

　身を斬る吹雪のような声で歌いながら怪獣が橙色光線を放ち、オーブは咄嗟に横に飛んでそれを躱した。
　光線が団地のアパートに命中する。するとその建物が光に包まれ、粒子となって砕けた。

14:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:04:33.15 ID:IkfmzLR50

怪獣「――――――」

　光線の中からオーブが消える。
　怪獣は再び浮き上がり、次の標的を探しに飛んでいった。

15:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:05:50.88 ID:IkfmzLR50

ガイ「……人間？」

ｼﾞｬｸﾞﾗｰ「そう。奴は北極の氷の中に封印されていた魔王獣。だがこの星は今風邪をひいているようでなあ、その熱で溶けちまったのさ。
　　　　　　風邪の原因はそう……人類という名の黴菌、かな？　フフフッ」

16:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:06:30.04 ID:IkfmzLR50

（二）

ジェッタ「や、やっと着いたあ～……」

17:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:07:00.67 ID:IkfmzLR50

　町中を走るSSP7。辺りは閑散としていて、猫の子一匹として姿を見かけない。

ジェッタ「みんな避難したのかな……」

18:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:07:33.40 ID:IkfmzLR50

ナオミ「あ、これって――」

シン「ビートル隊のワゴン……ですかね？」

19:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:08:01.43 ID:IkfmzLR50

シン「ジェッタ君。本町小学校へ行ってみましょう。川口市に怪獣が侵入したのなら、恐らくそこが避難場所になっているはずです」

　全くひとけがないのが延々と続いたので、シンの提案で避難所へ行くことになった。
　しかし、到着すると同時に三人は声をなくした。

20:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:08:29.66 ID:IkfmzLR50

ジェッタ「……！」

　慌ててハンドカメラを構えるジェッタ。
　怪獣はゆっくりと近づいてくる。ナオミが彼の袖を引っ張った。

21:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/30(日) 02:09:05.23 ID:IkfmzLR50

ジェッタ「キャ、キャップ！　どうしよう……！」

ナオミ「…………！」

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