24: ◆zPnN5fOydI
2016/10/30(日) 14:54:10.24 ID:JntGMmXe0
姉妹といえども訓練,出撃までも一緒になることはめったにない.
そんな中でも,一緒に過ごす僅かな時間の中で,私は妹達と接した.
妹達はどんどん増えていった.
荒潮,朝雲,山雲,霞,そして最後に霰.
部屋は狭くなり,壁には私物を入れるロッカーが8個並ぶ.
荒潮は私をよくからかってきた.そういう意味では,一番仲が良いのかもしれない.
山雲はかなり抜けているが,姉の朝雲がフォローをしてくれるので,私は安心できる.
霞は,ある意味妹の中で一番の問題児だ.満潮以上に口が悪く,私の言うこともあまり聞いてくれない.
しかし,かつて世話を焼いた大潮や満潮も,彼女たちの妹の前では立派なお姉さん.
私が気を張らずとも,妹の面倒をきちんと見てくれる.
私は,そんな良い妹を持てたことに,嬉しさと微かな誇りがこみ上げてくる.
ある日,私は気分転換に,明石さんの店に寄った.
何かのために,将来のために貯金をしているので,物を買ったことはない.
しかしその日はふと,インスタントカメラとアルバムが私の目に止まった.
アルバム.思い出の保管.
戦争がいつ終わるかは分からない.しかし,いつかは終わるものだと,私は信じている.
そして戦争が終わり年月が経てば,いつか,その戦争を懐かしいと思えるのではないだろうか.
そんな考えが私の頭によぎり,気づくと私は,インスタントカメラとアルバムの両方を持って,部屋に向かっていた.
戦争は辛く苦しいものだ.大破した人がドッグで長時間休んでいるのを見ると,背筋が凍る.
運が悪ければ,沈んでいたかもしれないのだ.
朝に顔を合わせた人が,夜には帰らぬ人となる.
私はまだそんな場面に遭遇したことはないし,遭遇したくもない.
しかし,それが戦争というものなのだ.
「みんな! 記念写真を取りましょう!」
私は妹達を並ばせ,セルフタイマーに設定したカメラを押入れにおき,撮影範囲に合わせて妹たちの立ち位置を調節する.
「はい,取るよ!」
私は,妹が用意してくれた位置に入り,シャッターが降りる.
パシャ.その場で写真が現像される.
妹に見せ,私はその写真をアルバムの一枚目に入れた.
喉元すぎれば熱さを忘れる.その熱さがいつの日か懐かしさに変わることを信じて,私はこの戦場で,精一杯思い出を作ろうと思った.
-FIN
45Res/42.31 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。