過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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12: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2016/11/06(日) 21:07:12.67 ID:8pj/VA940
訪れた地は、寂れた物悲しげな土地でした。

物はほとんどなく、数本の枯れた木が寂しげに立っています。

猿はここや、と様子で指を指します。

「入り口に着いたで……多分ここや」

「ふむふむ……確かに隠れとるのぉ〜」

老人は目を見開くと、ぴんと伸ばした指先に特殊な魔力を込めます。

そのままそっと指を付きだすと、見えない空間の壁が開き、隠されていた集落が姿を現しました。

「おぉ、こうなってんのか」

畑が所狭しと並んでいます。この欲望の街の中とは思えないほど静かな、平和な風景が広がっています。

……と言っても、先ほどの地震でいささかのダメージが広がっているようですが。失礼しました。

異変に気付いた数人の住民が、血相を変えて飛び出してきました。

服は灰色の衣を纏っただけと、シンプルかつ質素なものです。

「侵入者だ!!」

しかし、あのステルス結界は、指定された「鍵穴」と呼ばれる場所に、それに対応した特殊な魔力を流さなければ解除できないのですが。

さすがは老人です。繊細な魔力感知だけで鍵穴を突き止めました。並大抵の技術では御座いません。

警戒心を露わにした目を向ける住民に対し、男はごきりと肩を鳴らせます。おやおや、無理矢理従わせるつもりですか? 乱暴ですねぇ。

そんな男を押しのけ、猿がひょこりと顔を覗かせます。

「まーまー、ちょい待って!」

「! 貴方は……以前助けていただいた、お猿様!」

「ええてええて、エテ公とでも言ってくれたらええよ」

「いえ、そのような事は……一体何のご用で?」

「いやー、それがな。後ろの兄ちゃんの呪いを喰ってもらわれへんかなーって思ってね」

「分かりました、案内します」

話について行けない男は、ただぽかんと口を開けるのみでした。


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