過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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◆XkFHc6ejAk
[saga]
2016/11/09(水) 15:46:57.88 ID:WBahAE5V0
「おいジジイ、今日は俺の方へ行くぞ」
「ひっひっひ……何処に行くんじゃぁ?」
男は黙ってチケットを渡します。老人はわざとらしくため息をつき、ずんずんと進む男の後ろを歩いていきました。
辿り着いた場所は地下闘技場でした。観客席には所狭しと、人がぎゅうぎゅう詰めになっています。
今回の対戦相手は誰でしょうか? 始まる直前まで明かされる事はありません。
「今回はどんな奴だろうな」
「知らんよ……んん」
男の声は聞こえないと言った感じで、老人の頭が船を漕いでいます。
この野郎、全く興味無しか。男は大きな舌打ちをしました。
それから少しして、闘技場に対戦相手が入場しました。
片方は大きな陸亀の姿をしています。背中の甲羅には青々とした草が生えています。
対するもう一方は、鎧を纏った人の姿をしています。
カウントダウンが始まります。観客は大きな声で数字を叫びます。
「ゼロ!!」
ゴングが鳴りました。鎧の男がずっしりとした両手剣――グラディウスを振り上げて飛び出します。
対する亀が背中に力を込めると、甲羅から樹木の枝が伸びて鎧の男に襲いかかりました。
鎧の男はそれを叩き斬りますが、ぐんぐんと伸びてくる枝を前に、一度距離を取ります。
亀は深追いはしない様子で、じりじりと近づいて鎧の男の出方を伺っています。
「おーい! ビビってんのかぁ!?」
大きなヤジが飛び交います。彼らはインファイトでの攻防を楽しみにしているのです。
距離を取った安全な遅いバトルなど、金を払う価値はありません。
(うるせぇ奴らだ……しかし、鎧の方は魔法を使えないのか? そうなるとかなり分が悪そうだが)
男は左手で顔の目から下を掴むようにして考えます。自分だったらどうするか、と。
どうせ効果が薄いのなら、鎧を脱いでしまえばもう少し戦えそうですが……?
退路を塞がれた鎧の男は、先ほどよりも素早い動きで特攻しました。
案の定、無数の枝が飛び掛かります。それを打ち払っていましたが、ついに両手を縛り付けられてしまいました。
歓声と共に枝が鎧の男の全身をぐるぐる巻きにしてしまいます。勝負ありでしょうか。
「すまないな、ハンデは終わりだ」
鎧の男がそう告げた瞬間、爆発が発生しました。
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