過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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32: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2016/11/12(土) 22:07:06.65 ID:ArlH4pI70
(思えば……あのジジイに会ったのは、いつからだ?)

(確か……氷の竜と戦って、負けた時だったか)


『ひひっ、どうした若造よ。気が向いたから助けてやろう』


(あの時に助けられてから、か……思えばそれなりに長い付き合いだ)

(この前の「霧の怪物」でも助けられちまった……ムカつくぜ)

男は借りを作るのが大嫌いです。男が老人に対して棘がある態度を取るのは、半分はそれが理由です。

もう半分は、素直に恩義を感じる事が出来ない不器用さからでしょうか。

(いつか超えてやろうと思って……でも、挑めば挑むほど差を感じて)

(……いつからだ? 俺がジジイに挑まなくなったのは)

男の表情が、どんどん物憂げなものになっていきます。

ぎゅっと目を瞑ると、煙草を握りつぶしてしまいました。ぼうと火が灯り、煙草が消し炭になります。

――いつから俺はこんな腰抜けになった?

違う、俺はまだあいつに負けちゃいねえ――

「……俺は! 最強無敵の‘カルヴァル・ジャバウォック’様だろ!!」

その名を口にしたのは、いつ以来でしょうか。この街で暮らすうちに、男は自分の名前を忘れてしまっていました。

随分長い間、時が止まっていたように感じました。男はぎらりと赤い目を開きます。

野望を再確認し、めらめらと闘志が炎のように燃え盛り始めました。

(そうだ、忘れちゃいねぇ筈だ……俺はこの街で)

「最強になるんだよ」

男はウィルオウィスプを消すと、闇の海に沈みこんでいきました。


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