過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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35: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2016/11/14(月) 22:21:49.25 ID:VrYoP4K20
同時刻、老人はとある宿無しの神父の元へ訪れていました。

この街にも、神を信じる聖職者が居るものですね。一体誰を信じているのでしょうか。

老人に気が付いた神父は、ゆっくりと横になっていた身体を起こします。錆びた十字架がかちゃりと音を立てました。

「ああ……どうも、お久しぶりですなぁ」

「うむ。それで、結果は変わったかの?」

「いえ、明日、確実にこの街は地獄になります」

「地獄か……大歓迎じゃ。ひひっ」

「……う、ううっ!! 死にたくない……っ!」

この神父は、自らの危険に関する事のみ、未来予知が出来るのです。随分前から、この街に何かが起こると確信していたようですね。

老人は神父に乾いた林檎を与えます。これは早い話が麻薬のようなものでして、とんでもない快感が身体を駆け抜ける果実です。

神父は震える手でそれをそっと口に運ぶと、恍惚の表情を浮かべます。……おやおや、小便が漏れていますよ。

この麻薬中毒の神父は、何もする事が無く、こうして老人の与える薬にすがっています。

未来が見えるのなら逃げれば良いのですが、生憎彼は一人では何もやる気が起きないのです。

この林檎はとびきり効き目が強く、並の精神力ではその快楽に耐える事が出来ません。

こうしてみると、まるで親鳥が世話の焼ける雛に餌をあげているようで御座います。

薬の快楽にすがり、まともな時は神にすがり。何とも哀れな生き物ですねぇ。

いえ、ヒトは誰でも何かにすがって生きていく生き物でしたね。失礼。

その場から去った老人は空を見上げました。

(死にたくない? 随分と傲慢な考えじゃ)

「生きている者はいずれ死ぬわい。阿呆が」


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