過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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◆XkFHc6ejAk
[saga]
2016/11/14(月) 22:21:49.25 ID:VrYoP4K20
同時刻、老人はとある宿無しの神父の元へ訪れていました。
この街にも、神を信じる聖職者が居るものですね。一体誰を信じているのでしょうか。
老人に気が付いた神父は、ゆっくりと横になっていた身体を起こします。錆びた十字架がかちゃりと音を立てました。
「ああ……どうも、お久しぶりですなぁ」
「うむ。それで、結果は変わったかの?」
「いえ、明日、確実にこの街は地獄になります」
「地獄か……大歓迎じゃ。ひひっ」
「……う、ううっ!! 死にたくない……っ!」
この神父は、自らの危険に関する事のみ、未来予知が出来るのです。随分前から、この街に何かが起こると確信していたようですね。
老人は神父に乾いた林檎を与えます。これは早い話が麻薬のようなものでして、とんでもない快感が身体を駆け抜ける果実です。
神父は震える手でそれをそっと口に運ぶと、恍惚の表情を浮かべます。……おやおや、小便が漏れていますよ。
この麻薬中毒の神父は、何もする事が無く、こうして老人の与える薬にすがっています。
未来が見えるのなら逃げれば良いのですが、生憎彼は一人では何もやる気が起きないのです。
この林檎はとびきり効き目が強く、並の精神力ではその快楽に耐える事が出来ません。
こうしてみると、まるで親鳥が世話の焼ける雛に餌をあげているようで御座います。
薬の快楽にすがり、まともな時は神にすがり。何とも哀れな生き物ですねぇ。
いえ、ヒトは誰でも何かにすがって生きていく生き物でしたね。失礼。
その場から去った老人は空を見上げました。
(死にたくない? 随分と傲慢な考えじゃ)
「生きている者はいずれ死ぬわい。阿呆が」
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