過去ログ - 「死屍累々、全てを呑み込むこの街で」
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50: ◆XkFHc6ejAk[saga]
2016/11/18(金) 20:56:58.18 ID:ATlKM0yd0
以前の脈動とは違い、「イサクラ」がゆっくりと目を開き始めました。

ああ、本体の目で世界を見るのは、いつ以来でしょうか。感無量で御座います。

地上に複数の超巨大な亀裂が入り始めます。

その様子を眺める老人の所に、男が辿り着きました。高速で往復したせいで、少し息切れしています。

「おい! どうなってんだジジイ!!」

「ヒッヒッヒ……そうじゃのぉ、そろそろ教えてやろうか。猿にも教えた事だしの」

「ワシの配下に「アガリアレプト」と言う悪魔が居ての、昔そいつにこの街に潜むものを探らせたんじゃよ」

アガリアレプト、とは全ての真実を暴く能力を持つ悪魔です。

この街には何があるのか、老人はすでに探らせていたようです。抜け目ないですねぇ。

男はぴくりと耳を尖らせました。やはり、あいつが言っていた事は……

「それはこの街を築き、人の闇を吸って力を蓄えておる」

「どうやら、あの餓鬼共は、この街を荒らして負の気を大量に発生させ、それを起こそうとしていたんじゃろうなぁ」

うんうんと頷く老人を見て、男は焦りを隠しきれなくなります。

「おい! どうすんだよ!」

「ワシを誰だと思うておる? この‘カニバリィ・ベルゼブブ’にぬかりなどあると思うかぇ?」

老人は小さな魔方陣を作り、翡翠色のリングを召喚しました。

とてつもなく大きな地鳴りが鳴り始め、男はついに地面に立っていられなくなりました。

ゆっくりと地盤が傾いていきます。老人は高笑いしながら街を見下ろします。

「いやぁ、空から見下ろすと、本当に人々のマイナスの気が見えるようじゃのぉ」

「ほれ、こっちでは誰かが自殺しておるぞ? あっちでは殺し合いが起きとる」

「おお、キメラがやられておる。なかなか骨のあるやつも残っておるようじゃ」

「うむ……確かに、なかなか良い所じゃったの、此処は」

不意に男の全身から力が抜け、がくりと膝をついてしまいました。本体が地上の魔力を吸い始めたので御座います。

老人の持つリングが光りはじめます。これはあらかじめ設定した特定の位置にワープさせる腕輪です。

おそらく、別の世界に飛ぶつもりでしょうね。いつ崩壊が起きても大丈夫なようにしていたのでしょう。準備周到な事で。

ああ、しかし老人ともこれでお別れですか。寂しくなりますねぇ。……本当ですよ? フフッ。

「待てよ!! ジジィ!! まだ決着はついてねえだろーが!?」

「まぁ〜だそんな事を言っておるのか……」


「お主は最初から、ワシと戦いすら出来ておらんよ」


「ッ……!」

「じゃあの、カルヴァルよ」

「いち、ぬ〜けた!」

――そうして老人は光に包まれ、消えてしまいました。


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