2: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2016/11/17(木) 01:07:07.52 ID:IIwdgjic0
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
撮影のお仕事を終え、スタジオの外に出ると夜の帳は降りていて、空にはオリオン座が昇っていました。
運よくタクシーがスタジオの前を通ることを祈るよりも歩いて駅まで向かい、そこでタクシーに乗った方が早いので、しぶしぶ歩き始めます。
こつこつこつこつ。
昔はこんなものを履いて歩けるものか、と幾度となく不満をまき散らしたパンプスも、今ではすっかり慣れてしまいました。
こつこつこつこつ。
踏み出すたびにアスファルトと打ち合い、一定のリズムを刻みながら私を目的地まで運んでくれるこの靴に愛おしさすら感じる私なのでした。
そんなことを考えながら歩いていると、木枯らしが落ち葉を巻き上げながら、ひゅーっと私の隣を通り過ぎ、たまらず私はポケットへ手を避難させます。
こつこつこつこつ。
木枯らしの通り魔に負けてたまるものか、リズムを狂わせてなるものか、と足を踏み出します。
まだ、11月だというのにこんなに寒いなんて、冬になったら私は凍死してしまうに違いありません。
秋は、今の木枯らしのようにすぐいなくなってしまうのでしょう。
そして、長い冬がやってくるのでしょう。
私は冬はあまり好みません。
指がかじかむため、読書に支障がでるからです。
それ以外は、別段どうということはないのですが、私の中ではそれが大きな減点対象となってしまうのです。
しかし、まだ来てもいない冬に文句を言っても仕方がありませんから、ずんずん歩きます。
こつこつこつこつ。
寒いのは駅までの辛抱です。
こつこつ……ぷーっ。
不意のクラクションによってパンプスとアスファルトの調べは止められてしまいました。
振り返るとそこには見慣れた、自動車が。
ゆっくりと車の窓が下り、私のプロデューサーさんが顔を出しました。
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