3:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 17:40:35.68 ID:aK0UkAGEo
この年に一度のイベントは、大半の人にとっては祈りを捧げたり家族で過ごしたりするための大切な日でもある。
とはいえ、私と一緒にこの日を祝うためだけにあなたが無理矢理スケジュールを調整したと聞いた時は、
なんだか悪いことをしてしまったみたいで素直には喜べなかった。
あなたはこの街で一番の有名人で、望めば私なんかよりもっと素敵な人たちと楽しい人生を過ごせるはずなのに、
あなたはいつも私に構ってばかりいる。
私は、私のせいであなたが自分の役割を忘れてしまうのではないかと思って怖くなる。
「明日もお仕事、早いんでしょう? こんなに遅くまで起きてていいんですか?」
「平気ですよ。移動時間で少しくらいは眠れますから」
「ダメです。ゆっくり寝てください。ただでさえ忙しくて普段あまり眠れてないんだから」
「あ、見て、ほら。星座がひとつ出来上がりましたよ。あれは何座なんでしょう……?」
あなたは枕元にあるラジオの音量を上げて子供みたいにはしゃぐ。
『ぴいいいがああああ──ざざざざざ──ザザッ只今南──に見えます大きく円を描くような形の星座は第九地区にお住まいのニナ様より、名前は「パンケーキ座」です──素朴で大変素晴らしい──ザッ──お次に……あっ、線が途中で途切れてしまっていますね、装置の故障でしょうか……えー、本日ご紹介します新星座はあと七件ございますが少々遅れが出ている模様で──……ザザッ、ザザザざぴゅうううううがががががが……』
「どうしたんでしょう? 電波が悪いのかしら……」
「あっ! 楓さん、あれ!」
私が天井を指差したのと、あなたが空を見上げたのは同時だった。
夜のスクリーンの片隅で、小さな星が二つ、コツンとぶつかって粉々に砕けた。
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