過去ログ - 白菊ほたる「それは涙ではないのだから」
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11: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 11:49:40.54 ID:2h7CC88o0
ステージの上はびしゃびしゃで、ライトなどの機材もいくつか故障してしまった。

観客スペースはもちろん誰もいないし、それ以前に渋滞などで来たくても来れない状態だそうだ。

私はというと、プロデューサーさんやスタッフさん達と一緒に控え室代わりのテントに避難している。
以下略



12: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 11:51:50.33 ID:2h7CC88o0
「ほたる、ちょっといいか?」

話し合いが一段落ついたらしく、プロデューサーさんが私を呼ぶ。

私は心の中で先に「ごめんなさい」と言ってから、プロデューサーさんの前に立った。
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13: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 11:54:12.75 ID:2h7CC88o0
プロデューサーさんも私の我が儘を予想していたのだろう。

驚いた様子はなく、状況を伝えてくれる。

「見ての通り、観客は一人もいない。これから来るとも思えない」
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14: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:04:16.30 ID:2h7CC88o0
だからこそ、私は選ぶ。あの日から一年間、ずっとそうしてきたように。

「歌います。歌わせてください」

「今は観客スペースには誰もいません。たぶん今日はもう誰も来ないと思います」
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15: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:07:11.39 ID:2h7CC88o0
「一曲だ」

プロデューサーさんが溜息まじりに言った。

「天気がさらに悪化するかもわからない。だから一曲だけだ。それでいいか?」
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16: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:09:30.89 ID:2h7CC88o0
そしてライブの準備。

「出来るだけ濡れないように、って言ってもこの雨じゃ無理よね」と苦い顔をする衣装スタッフさんにライブ衣装を着せてもらい。

「すぐ落ちちゃうけど、一応ね」と楽しげなメイクスタッフさんにお化粧をしてもらって。
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17: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:10:26.13 ID:2h7CC88o0
やっぱり観客は一人もいない。

そして全身を叩く雨粒が、ほんの数秒で衣装がずぶ濡れにしたのを感じる。

メイクもきっと酷いことになっているし、私を照らしているライトの一つがジジッという音とともに切れてしまった。
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18: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:11:16.85 ID:2h7CC88o0
激しい雨音にかきけされないように、今日のために練習してきた曲を歌う。

それは感謝の歌。

苦しい時も、悲しい時も、支えてくれた人へと送る心の歌。
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19: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:12:55.40 ID:2h7CC88o0
「ありがとうございました」

歌が終わり、私は観客スペースに向かってお辞儀をする。

やはり、歌が終わっても観客は一人も来なかった。
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20: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:13:40.18 ID:2h7CC88o0
プロデューサーさんを含め、スタッフさん達にはいつも迷惑をかけてしまっている。

今日も無茶を聞いてもらったことについて、改めて感謝をしよう。

そう思って振り向いたのだが。
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21: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:14:41.58 ID:2h7CC88o0
光。

激しい雨が降る薄暗い中、光の玉が浮いていた。

それも一つや二つではない。
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