過去ログ - 白菊ほたる「それは涙ではないのだから」
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15: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:07:11.39 ID:2h7CC88o0
「一曲だ」

プロデューサーさんが溜息まじりに言った。

「天気がさらに悪化するかもわからない。だから一曲だけだ。それでいいか?」
以下略



16: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:09:30.89 ID:2h7CC88o0
そしてライブの準備。

「出来るだけ濡れないように、って言ってもこの雨じゃ無理よね」と苦い顔をする衣装スタッフさんにライブ衣装を着せてもらい。

「すぐ落ちちゃうけど、一応ね」と楽しげなメイクスタッフさんにお化粧をしてもらって。
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17: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:10:26.13 ID:2h7CC88o0
やっぱり観客は一人もいない。

そして全身を叩く雨粒が、ほんの数秒で衣装がずぶ濡れにしたのを感じる。

メイクもきっと酷いことになっているし、私を照らしているライトの一つがジジッという音とともに切れてしまった。
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18: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:11:16.85 ID:2h7CC88o0
激しい雨音にかきけされないように、今日のために練習してきた曲を歌う。

それは感謝の歌。

苦しい時も、悲しい時も、支えてくれた人へと送る心の歌。
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19: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:12:55.40 ID:2h7CC88o0
「ありがとうございました」

歌が終わり、私は観客スペースに向かってお辞儀をする。

やはり、歌が終わっても観客は一人も来なかった。
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20: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:13:40.18 ID:2h7CC88o0
プロデューサーさんを含め、スタッフさん達にはいつも迷惑をかけてしまっている。

今日も無茶を聞いてもらったことについて、改めて感謝をしよう。

そう思って振り向いたのだが。
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21: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:14:41.58 ID:2h7CC88o0
光。

激しい雨が降る薄暗い中、光の玉が浮いていた。

それも一つや二つではない。
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22: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:16:11.45 ID:2h7CC88o0
「綺麗……」

頬を打つ雨も気にせず目の前の光景を見つめていると、光はだんだんと私の方に近づき、そしてすべての光が私を照らした。

一瞬の目のくらみで目を閉じた私に、声が届く。
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23: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:17:13.66 ID:2h7CC88o0
もしかしたら、私は幻を見ているのかもしれない。

今もあたりが暗くなるぐらい酷い雨が降っているのに、どうして貴方たちがここにいるの?

ライブが延期になったことは知っているはずなのに、どうしてわざわざ来たの?
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24: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:18:58.12 ID:2h7CC88o0
声をあげたのは、一番前で私の名前が書かれた団扇を持った男性。

男性は雨音よりも大きく、声を張り上げる。

「ほたるちゃんは諦めなかっただろ!」
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25: ◆8ozqV8dCI2[saga]
2016/11/27(日) 12:20:27.66 ID:2h7CC88o0
そうだそうだ、と男性に続いて声をあげるファンのみなさんを見て、私は思わず笑ってしまった。

だってそれは、笑ってしまうような話だ。

私がファンより先に諦めないと決めたように、ファンのみなさんも私より先に諦めないと決めていたというのなら。
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