過去ログ - 小梅「ありがとうを物語にのせて」
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9: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:14:35.74 ID:Uojde39To
 後ろに急に引っ張られ、ぎゅっと軽く抱きしめられた。服越しに伝わる体温と、微かに聞こえる心臓の鼓動。私の髪をゆっくりと撫でながら、「あのね、小梅ちゃん」と優しい声をかけてくれる。

「きらりね、一度も小梅ちゃんのお話、嫌だって思ったことないよ?」

 私の気持ちに応じるように震える喉から、そんなはずない、とよれよれの声を絞り出す。助けてもらっているのに。そんな思いが胸いっぱいに詰まって、肺を押しつぶす。
 私の声が聞こえたのかどうかは分からないけど、きらりさんの抱きしめが少しだけ強くなる。窓の外の豪雨から私を守るように、私の全身が温もりを覆い尽くす。

「確かにきらり、こわぁいお話はあんまし得意じゃないよ? でもぉ、お話してる時の小梅ちゃん、とぉっても楽しそうなんだ」

 ゆったりとした鼓動のリズムに乗るように、きらりさんの言葉が囁かれ、私に染み入ってくる。目が慣れ始めたのか、テーブルや棚なんかが輪郭をおぼろげに取り戻し始めていた。
 

「でねでね、小梅ちゃんね、お話終わったあと、『どうだった』って聞くでしょ? その時ね、すっごくハピハピなお顔してるにぃ! 笑ってる小梅ちゃんのこと、きらり大好き。だからもっともっと、って聞きたくなるの」

 優しい声、柔らかい感触、ふんわりした香り、ぽかぽかするような暖かさ。きらりさんの全部は、私が好んでいたものとまるっきり違っていて。

 それなのになぜか、ビックリするほど私の心を落ち着かせていた。


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