8:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 18:31:53.11 ID:WwkYnpYs0
 「ムギちゃん、すごいね。迎えに来てくれてよかったよ」 
  
 七年も住んでいればね、とムギちゃんはこともなげに笑った。 
  
 「そーいや、りっちゃんどうしたの?」 
9:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 18:32:30.14 ID:WwkYnpYs0
 駅前の居酒屋に入って一時間くらいが経ったころ、ようやくりっちゃんが姿を現した。 
 肩を過ぎるくらいまで伸ばした髪に、軽くパーマをあてたりっちゃんは、ごめんごめん、と手刀を切りながら席に座り、手をあげて店員さんを呼び止めると、笑顔で生中をひとつ、注文した。 
  
 「唯、久しぶりなのにごめんな、遅れて」 
  
10:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 18:32:59.18 ID:WwkYnpYs0
 「いつ以来だっけ? 唯と会うの」 
  
 「年末に会ったじゃん」 
  
 りっちゃんの生中がやってきた。ジョッキを掲げ、三人でもう一度、乾杯をする。 
11:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 18:33:48.26 ID:WwkYnpYs0
 「そんなになるのかぁー…みんなで毎年旅行に行ってた頃が大昔に思えるな」 
  
 「しょうがないよ、りっちゃん。結婚したり、子供できたりしたらさ。カテイノジジョーってやつだよ」 
  
 「家庭の事情、ねぇ」 
12:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 18:34:30.27 ID:WwkYnpYs0
 大学卒業。 
 さすがに就職先まで同じ、というわけにもいかず、高校大学とそれまでずっと一緒だったわたし達にようやく別れの季節がやってきた。 
 澪ちゃんは大阪、ムギちゃんは東京。わたしとりっちゃんは地元…だったけど転勤次第ではどうなるかわかんない。まだ大学生だったあずにゃんだって、就活の結果どうなるのかわかんない。 
 だからわたし達はひとつ約束をした。 
  
13:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 18:35:44.24 ID:WwkYnpYs0
 「集まるだけなら、次は年末?」 
 軟骨のからあげを頬張りつつ、わたしが尋ねる。 
  
 「その前に梓ちゃんの結婚式よ」 
 お銚子を傾けつつムギちゃんが答えると、 
14:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 18:38:06.31 ID:WwkYnpYs0
 「ハァァァ〜〜あずにゃんが結婚かぁ…わたしのあずにゃんが……」 
  
 「唯のじゃない、っての。しっかし最近、ウチの職場でも結婚ラッシュでさぁ…」 
  
 「りっちゃんとこも? わたしも先月三回も結婚式に出たからさ、財布カラッカラ…」 
15:名無しNIPPER[sage]
2016/11/27(日) 18:38:14.76 ID:j1i+9VNXO
 唯誕生日おめでとう 
16:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 18:39:06.62 ID:WwkYnpYs0
 「ならないならない! だって事実わたし達かわいいもーん。だから結婚してなくたって、まだまだ焦る時間じゃないっしょー。 
  ほらー人生、長いんだから。それにけいおん部的にも独身勢が人数優勢! いえーい!」 
  
 わたしがムダに大きな声をあげてグラスを掲げると、ムギちゃんもそれに合わせてグラスを掲げた。 
 りっちゃんは顔をため息をついて呆れたように笑い、申し訳程度にグラスを掲げ、乾杯をした。 
17:名無しNIPPER[sage saga]
2016/11/27(日) 18:39:53.41 ID:WwkYnpYs0
 わたし達の中で、一番はじめに結婚したのは澪ちゃんだった。 
 勤め先の銀行で、新入社員だった頃の教育係だった先輩と。 
 結婚式で流すため、わざわざ桜高の生徒会室を訪れて伝説のライブビデオを借り、編集した映像を披露宴で流したのはいい思い出。 
  
 そのあとの二次会で花嫁の鉄拳が、りっちゃんの頭上に炸裂にしたのは言うまでもない。 
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