11: ◆6QdCQg5S.DlH[saga sage]
2016/11/27(日) 22:26:26.72 ID:h2LPpq420
「……」
ペラ、ペラ、と適当にページをめくります。
片手だと少しめくりづらいですが……まあ、仕方ありません。
……何が仕方ないのでしょうか。
ただ誤魔化すためだけにめくっているというのに。
「……」
そもそも、誰に何を誤魔化しているのでしょうか。
今ここにいるのは私とプロデューサーさんだけで、プロデューサーさんは眠っていて……。
私を誤魔化す……って言うのもおかしな話ですが……でも、きっと……。
……それに、本当に誤魔化したいならこの握った手を離すべきでしょう。
ですが、私の手にはまだ、刻むように脈が響いています。
とくん、どくん、と混ざり合っています……。
私は何がしたいのでしょうか……自分で自分がよくわかりません。
……ああ、そういえばこの本でも、女の子がそういった心境に陥っていましたね。
あれはどのあたりのページだったでしょうか……。
「……」
ペラ、ペラ、と片手でページをめくります。
もう片手でプロデューサーさんの脈を感じながら。
傍から見たら滑稽かもしれませんね……私自身もそう思っていますし。
「はぁ……」
……いつか。
いつか、私はしっかりと思いを告げることができ――いえ、私からでなくてもかまいません。
とにかく私の思いが届き、結ばれ、成就する。
そんな素敵なシナリオにたどり着くことができるのでしょうか……。
「……」
お手本を片手に恋の勉強をしている今の私には……まだ難しそうです。
おしまい
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