8: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/11/30(水) 18:48:59.78 ID:7FZgc2Oz0
  引き止めるべきだ。きっとアイドルになってしまったら、いまみたいには一緒にいられない。でも、引き止める理由はいくら探しても見つからなくて。恋愛感情があるわけでもない。とっくに答はでている。いまぼくがフレデリカの横顔に目を奪われている事実は、彼女がアイドルに向いている証拠だから。 
  
  ぼくは視線を白い街に向ける。 
  
 「大丈夫だよ。お前は適当だけど、適当なだけじゃないんだ。それに、ぼくはお前の笑顔に救われてきた。たぶん、フレデリカの笑顔にはそういう魔法があるんだよ」 
  
  中途半端な日々も、寂しい気持ちも、フレデリカの無垢な笑顔を見ればどうでもよく思えた。こいつは心が綺麗なのだ。雪を欺く心の持ち主。この街よりも、ずっと白い。だから、きっと向いている。沢山の人を笑顔にできる。ぼくはフレデリカから沢山の笑顔をもらった。 
  
  フレデリカは少し驚いたようにこちらを見ていた。それから大人びた笑顔を浮かべる。 
  
 「ふふ、ありがとー。うん、そう言われたらちょっとだけ、自信でたかも」 
  
  タタンタタンと嬉しそうにステップを踏んで、フレデリカは手を大きく広げて笑顔でくるりと回った。 
  
  別れ際、フレデリカはまたねと言った。ぼくはじゃあねと返した。 
  
  この真冬のダンスが、間近で見た最後のダンスとなった。 
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