9: ◆GWARj2QOL2[saga]
2016/12/05(月) 21:05:59.87 ID:XfSadNeEO
『…!…!』
その大きなムカデは、何かを嫌がるような仕草をし出した。
肉食で、食欲旺盛なムカデが今、目の前にいる獲物を捕えることを中断してでも、だ。
「…!」
その行動でようやく我に返った卯月は、その原因を目を動かす最小限の行動で探った。
すると、一人の少年が、目の前の化け物に向かって矢を放っている事に気がついた。
「…おい!!そこの姉ちゃん!!早く逃げろ!!!」
彼女とそう変わらない年齢だろう少年は、卯月に向かって逃げるよう大きな声で呼びかけた。
「…で、でも…」
しかし、意識が戻ったからといって、目の前の化け物から全速力で逃げられる脚力が戻ったわけではない。
「いいから!!這ってでも逃げろ!!!俺だっていつまでも持たねぇぞ!!!」
それでも少年は卯月に対し、必死に呼びかけた。
少年にも余裕は無い。
自分も食われる可能性があるというのに、卯月を助けようと決死の覚悟で矢を放っている。
「…は、はい…!」
「こっちだバケモン!!このっ!このっ!このっ!!」
勿論、効かない事は百も承知で。
何度も、何本も。
だが、その中で少年はあることに気がついた。
「…!あれなら…!!」
恐らく、この大ムカデが作っただろう環境。
薙ぎ倒された木々。
「…とっとと消えろ!!このバケモン!!!」
それは、少年にとってこれ以上ない程の好都合であった。
「…この…!」
やがて矢が最後の一本となると、少年は鏃に破った自身の服の一部を巻きつける。
鹿程度なら一撃で葬る殺傷力を持つ弓矢ではあるが、とてもじゃないがこの化け物には敵わない。
ならばどうするか。
効かせる必要は無いのだ。
ただ、追い払えば良い。
「…これで…!」
少年は、その鏃部分に火を付け、大ムカデの前方にある木々に向かって。
「終わりだバケモン!!」
全力で持って、矢を放った。
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