3: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/07(水) 21:02:39.65 ID:Q/KsUm3o0
課長との打ち合わせを終え、小会議室を出る。
打ち合わせの内容は、幸子の初シングルの販促について。
デビュー当初は、輿水幸子という名前を消費者に覚えさせなければ話にならない。
事務所所属のアイドルがパーソナリティを務めるラジオへの出演、地方のショッピングモールを回るミニライブツアー。
まずは正統派キュートアイドルとして、『可愛さ』を武器に闘っていくつもりだが、やはり確固たる方向性はそろそろ決めておかねば。すでに遅すぎるくらいだ。
素の幸子に一番近い形が理想ではあるが――それがアイドルとして上を目指すための最適解とは限らない。
少しのズレは許容しよう。
幸子本人の希望も重要だ。
白い壁紙に挟まれた廊下を歩き、執務室へと急ぐ。
今後の方針を話し合うため、幸子を待たせてしまっているのだ。
課長との打ち合わせの前からだから、そろそろ痺れを切らしている頃だろう。
ああ、ほら、噂をすれば幸子から着信だ。
「もしもし、悪いな幸子、少し打ち合わせが長引いて――」
『そんなことは良いですから早く来てくださいっ! 大変なんですっ!』
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