過去ログ - エスペランサ
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2: ◆1aBMjONGbo[saga]
2016/12/10(土) 01:59:39.05 ID:CurJFEFPO
ヒュー・スクリントン氏の私生活はお世辞にもしっかりしているとは言い難い。

昼間から飲んだくれ、貯金を切り崩したはした金を握りしめ日がなパチンコに興じる。
夜には安居酒屋に居座り、誰彼構わずに絡んでは疎まれ、店主にたたき出されて店を出、千鳥足で自宅に帰るのが常だった。


────今日もダメかぁ。
誰にともなくヒューは呟く。ダメ、というのがパチンコでまた勝てなかったことなのか、それとも行きつけの居酒屋からたたき出されたことなのか、はたまた今の自堕落な生活に向けてなのか。
それは本人にすらわからなかった。

ヒューは千鳥足のまま帰路につき、酔って回らない頭で明日のパチ代はどうしようかなどとどうでもいいことを考えていた。

ヒュー「……冷えるな……ヒック」

思わず口に出す。秋も暮れ雪が降るんじゃないかというほど冷たい空気の中、満月は煌々と煌めいていた。

居酒屋からおよそ徒歩10分。ヒューは自宅へ帰り着き、玄関のドアをアルコールで震える手でなんとか開ける。

ヒュー「たぁだいまァ」

こんなヒューにも娘はいる。ケイシーという名の、気立てが良く、きりきりと働き料理もできる、父娘なのかと疑うほどにできた娘である。

ところが、様子がおかしい。いつもなら

『またこんな時間まで飲み歩いて!また人様に迷惑かけてたんじゃないでしょうね?!』

とかなんとか口うるさく言ってくるのに、今日はケイシーの姿が見えない。それどころか、いつもなら遅くに帰るヒューを想いリビングの電気はつけてあるはずなのに、家中の照明が点いておらず、真っ暗だった。
ヒューは舌打ちをし、自分のことを棚に上げてここにいない娘を責める。

ヒュー「あのバカ……こんな時間にどこほっつきあるってんだ?帰ってきたら叱ってやる……」

ヒューはぶつくさ言いながら2階の寝室へ向かう。
小煩い娘がいない中、いちいち風呂に早く入れとか仕事を見つけろとか言われずにベッドに向かうことが出来る幸福と身体中に回りきったアルコールを前に、ヒューはこの家の異変に気づいていなかった。

気づくことが、出来なかった。


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