5: ◆1aBMjONGbo[saga]
2016/12/10(土) 23:47:11.54 ID:DiAoWjx2O
一歩一歩、アルコールで鈍った身体を引きずるように階段を上がる。上がりきった先、2階のフロアは階段から見て正面がヒューの部屋、右手側が娘ケイシーの部屋だ。
ろくにまっすぐ歩けもしない足を無理やり動かし、自室へと歩くヒューの耳は、ふと物音を捉える。
何かがぶつかるような音だ。
ヒューは自室に抜き足で近づき、恐る恐るといった体でドアノブをつかみ、回す。
そこにあったのは散乱したビール缶とタバコの吸殻。対照的にピシッと整えられたベッドのシーツ。
前者はヒューが、後者は恐らく、というか絶対にケイシーがやったものだろう。
散らかり具合はともかくとして、部屋の様子に異変はない。いつもと同じだ。
────やはり、気のせいか。
そう思い、室内に入ってドアを閉めようとしたその時。先ほどよりも大きな衝突音がヒューの動きを留める。
ヒュー「!?」
咄嗟に自室のドアを背にして、2階を見渡す。今登ってきた階段に異変はない。
ふとケイシーの部屋に視線をやると、ドアが不自然に歪んでいる。
ヒューはゆっくりと娘の部屋に近づき、ノックをする。
ヒュー「おい、ケイシー!いるのか?何かあったのか?」
返事はない。不気味なまでの静寂が鼓膜に突き刺さり、一種の恐怖的感情が湧き上がる。
なんてことは無い。物音は気のせいだ。そして娘は家の電気を消して寝ているだけなんだと自分に言い聞かせ、先ほど自室を開けたのと同じように、恐る恐るドアノブに触れる。────冷たい。
まるでこの状況を嘲笑うかのような無機物の冷たさにヒューは逆に奮い立ち、勢いよくドアを開ける。
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