過去ログ - 【DQ7】マリベル「アミット漁についていくわ。」【後日談】
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33: ◆N7KRije7Xs[sage saga]
2016/12/24(土) 11:26:40.34 ID:8lPBK+pa0



*「おい アルス 起きろ。とっくに 到着してるぜ。」



アルス「…あ…… はい…。」

夜も明ける前にアミット号はコスタールの港に到着していた。
初日の緊張感からよほど疲れが溜まっていたのか、少年はあれから一度も起きることなく朝を迎えた。
大きな欠伸と共に体を伸ばして一息つくと、昨晩の少女の温もりが思い出される。
そして照れくさい感覚と共にこれからのことに思いを馳せ、胸の内からふつふつと力が沸き上がるような感覚を覚えたのだった。

ハンモックから起き上がり辺りの様子をうかがうと隣の炊事場からはトントントンという子気味良いリズムを刻む音が聞こえてくる。
どうやら料理人たちは朝食の準備をとっくに始めているようだ。

アルス「…………………。」

再び注意を凝らして耳をそばだてると一つ上の階から何やら話し声が聞こえてくる。



“しまった!”



慌てて着替えを済ませて梯子を昇ると、案の定そこでは本日の動きについて話し合う父親と漁師たちの姿があった。

ボルカノ「遅いぞ アルス。もう とっくに 話は すんじまったぜ。」

駆けてきた少年を船長が仁王立ちで迎える。

アルス「ああっ! ご ごめんなさい……。」
アルス「……それで ぼくは どうすれば いいんですか?」

ボルカノ「おう。お前は いわば 大使みたいなもんだ。」
ボルカノ「オレと 一緒に コスタール王の ところに 来てもらうぞ。」

アルス「あそこまでは ここからでも けっこうな距離があるけど 大丈夫ですか?」

ボルカノ「場合によっちゃ みんなには 何日か ここで 待っててもらわなくちゃ ならんかもな。」

船長の言う通り、ここコスタールの港から国王の住む城へ行くには大陸の端から端まで行くようなもので、
実際に徒歩で歩いて行った場合かなりの時間を要することは明らかだった。

アルス「歩いて 行くんですか?」

ボルカノ「……? 他に 何が あるっていうんでえ? 馬車でも 手配するのか?」

アルス「……いい方法が あるんです。」

確かに徒歩に比べて馬車ならば多少早く到着するだろう。
加えて王の使いという名目上、申請すれば馬車代くらいは国の経費で落ちる可能性は高い。
しかし少年には費用が掛からず馬車よりも早い移動手段があるのだった。

アルス「ぼくに 任せてもらえませんか?」

ボルカノ「…………………。」
ボルカノ「お前が そこまで いうなら 何か 考えがあるんだろう。」
ボルカノ「まあいい。残るやつらには 次の港までに 必要な 物資を調達してもらう。」
ボルカノ「お前ら 俺たちが戻るまで 暇なら カジノにいってても 構わないからな。ただしあんまり のめりこみすぎるんじゃないぜ。」

*「「「うす!!」」」

ボルカノ「それじゃ 朝食が済んだら 解散だ!!」

号令と共に漁師たちは一斉に階下の食堂へと降りていく。
少年も続いて降りていくと既にそこにはいくつもの皿が並べられ、食欲をそそるバターの焼ける匂いがほんのり漂っていた。

少年が梯子の隣で立ち尽くしていると料理の盛り付けられた皿を運ぶ少女が炊事場から出てきた。
少女は少年の存在に気付くと少しだけ頬を紅潮させ微笑む。そんな彼女に釣られては顔を赤らめ、少年は恥じらうように後頭部を掻いて目を伏せる。

そんな二人の一瞬のやり取りに気付いたのは、
やはり昨晩のやり取りを否が応でも見せつけられてしまった船長と、小さいころから少女を見ている料理長だけだった。

ボルカノ「…………………。」

コック長「…………………。」

やがて諦めたように一息つくと、少年の父親は自分の定席に腰を下ろし、料理長も残りの皿を取りに調理場へと戻っていった。

そうして朝食の間、黙々と料理を平らげる漁師たちに加えて、お互いの顔を、視線を、どうしても気にしてしまう二人の沈黙が、
決して大きくはない食堂をさらにこじんまりと感じさせるのだった。


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