過去ログ - 【DQ7】マリベル「アミット漁についていくわ。」【後日談】
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◆N7KRije7Xs
[sage saga]
2017/01/07(土) 17:55:14.80 ID:KtF5zPtg0
アルス「ふー……。」
一人船に残された少年は船縁に腕を置いて海の彼方を見つめていた。
アルス「久しぶりだな……。」
“こうして一人で静かな時をのんびり過ごすのはいったいいつ以来だっただろうか”
“過去の世界で魔王を倒してつかの間の休息を得た、あの時が最後だっただろうか”
アルス「…………………。」
少年は潮風を受けながらこれまでの旅のことを思い出していた。
幼馴染二人と好奇心から旅を始めて紛れ込んだ過去の世界。
初めて見た魔物への恐怖や高揚感。救われない人々と救われた人々。
新しい仲間との出会いと親友との別れ。少女の離脱。
魔王との邂逅。偽りの神の降臨。封印された故郷と伝説の海賊たち。
世界の復活と魔王の出現。そして全員で挑んだ魔王との最終決戦。
アルス「ふふっ。」
わずか二年のうちに起きたあっという間の出来事。
しかしそのどれもこれもが昨日のことのように思い出される。
それほど凝縮されて濃い時間だった。
そしてそれは少年にとってかけがえのない思い出であり、そのすべてが今の少年を形作っていた。
あの出来事がなければいまだに自分は臆病な漁師の息子としてある意味幸せに過ごしていただろう。
だが今は別の意味で幸せに過ごしていると言えた。
何も知らない幸せと、運命を切り開き、すべてを受け入れ充実のうちにいる幸せとでは天と地ほどの差があったのだ。
こうして今の自分がいること、それそのものが少年の幸せだった。
そしていつも隣には少女がいる。旅の始まる前のあの日と同じように。
そこまで思いを巡らせて少年は少女の顔を思い出す。
アルス「マリベル……。」
幼馴染の少女はどんなに文句を言っても結局は最後まで自分と共に旅を続けてくれた。
少年にはわかりかねていた。
少女を突き動かしていたのは彼女の好奇心なのか、彼女なりの使命感だったのか。
答えはどちらも正しかった。だがそれだけではなかった。
今回の船旅の初日に少女はもう一つの答えを教えてくれたのだ。
“あんたと 一緒に いたかっただけ”
少年は嬉しかった。小さい頃から一緒に育った少女はこんな自分のことを好いてくれていたのだ。
ワガママで、高飛車で、見栄っ張りで、強情で、人を見れば毒を吐く表向きの姿。
今思えばそのどれもが少年に対する寂しさで、自信のなさと素直じゃない優しさの裏返しだったのかもしれない。
だが、少女は勇気を振り絞って思いの丈をぶつけてくれた。
少年は思った。“二度とこの笑顔を曇らせまい”と。
しかし実際はその顔を濡らしてばかりだった。
旅の最中どんなに辛いことがあっても涙を見せなかったあの少女が、この船旅ではか弱い女の子のようにその目を泣き腫らしている。
魔王すら打ち倒したあの英雄の少女が。
アルス「…どうして………。」
その原因を作るのはいつも少年だった。
“いつも泣かせるのは自分だ”
“どうしてこんなにも彼女を悲しませているのか”
“何が彼女を弱くしてしまったのか”
思えば今朝だってそうだった。必死になって自分を眠りから覚まさせてくれた少女。
その顔を再び自分が曇らせてしまうことになろうとは思いもしなかった。
自分に非があるとはいえ、あの仕打ちにはすっかり堪えてしまい一刻も早く少女と離れたくなり、いつにも増して口数が減ってしまった。
そして今に至る。
思えばそれすら彼女を傷つけていたのかもしれない。
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