過去ログ - 【DQ7】マリベル「アミット漁についていくわ。」【後日談】
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652: ◆N7KRije7Xs[sage saga]
2017/01/13(金) 20:09:02.68 ID:ZKa88jEr0

突如放たれた言葉に耳が追い付かず、少年は目を丸くして身じろぎする。

*「オレは 人を 襲ってなんていない。」

あれほど固く動かないと思われた顔はいつの間にか険しく寄り、飾りのようだった口は流暢に動いている。

アルス「そ それじゃ あの人たちは お前におびえて 逃げてきただけだと 言うのか?」

*「そうだ。」

アルス「なら どうして 逃げたりしたんだ。」

*「お前の目は 敵意に満ちていた。だから 逃げただけだ。」

アルス「……ここに 逃げたのは なぜだ?」

*「見ろ。」

そう言って隻腕の像は後ろにある止まったままの歯車の方を向く。

アルス「その歯車は どうして 止まっているんだ。」

少年は“稼働”の方に倒れているレバーを見ながら言う。



*「この時計塔と オレは 不思議な魔力で つながっている。」



アルス「…………………。」

*「どうやら この時計塔の近くにいると オレの身体は動くようだ。」

アルス「じゃあ 離れたら……。」

*「動けん。だが オレは バロックの作品だ。」
*「長い時を 人々と共に 過ごしてきた。オレは この町が好きだ。」
*「しかし こうして 体が動いてしまっては 人々は オレを恐れるだろう。」

アルス「…………………。」

*「人間よ オレはどうすればいい。」
*「オレはこの町にいたい。だが この町にいては 人がいなくなってしまう。」

名もない作品は問う。

アルス「きみは 自分が 動けなくなっても 構わないのかい?」
アルス「せっかく 自らの意思で 動けるチカラを 手に入れたのに。」

*「…構わん。もともと オレは あそこで 立っているのが 好きなのだ。」
*「一心不乱に オレの体を観察する芸術家。楽しそうに オレの周りで遊ぶ子供たち。」
*「話し相手になってくれる 小鳥たち。愛の素晴らしさを教えてくれる 恋人たち。誰に頼まれるでもなく 体を洗ってくれる老人。」
*「……これ以上 望むものはない。」

アルス「…………………。」

少年にはこの像が前に石版世界で戦った者たちのように、ただ彷徨い、生ある者に害するような魔物には見えなかった。

アルス「わかった。ぼくも できるだけのことはしてみよう。」
アルス「ついてきて。」

そして決心すると少年は“彼”の望みを叶えてやるため、彼を連れたって時計塔を後にしたのだった。





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