過去ログ - 【DQ7】マリベル「アミット漁についていくわ。」【後日談】
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705: ◆N7KRije7Xs[sage saga]
2017/01/14(土) 18:52:20.36 ID:I8BPs1sh0

そう言って二人は副長からぶどう酒を受け取ると、その透き通るような濃い赤色に鼻を近づける。
杯の中から香るどこか懐かしい香りはあの時の情景を思い出させるように二人の鼻をくすぐる。
揺らめく炎、美しく儚く、もの悲しいトゥーラの調べ、情熱的な娘たちの踊り、すべてがあの時のままのように二人の記憶を呼び覚ましていく。

マリベル「なんだか なつかしいわね。」

アルス「……うん。」

二人は瞳を閉じ、記憶の糸を手繰り寄せるように一口、また一口、甘みと渋み、そして酸味を共に思い出の味を飲み干していく。

マリベル「……おいしいね。」

アルス「…………………。」

マリベル「……アルス?」

少女は空っぽになった杯をじっと見つめる少年の名を呼ぶ。

アルス「マリベル。」

マリベル「なあに?」

アルス「これ 父さんにも あげたいんだ。」

少年は少女の顔を見てそう告げる。

マリベル「……行くのね。」

アルス「うん。」

少年の顔に、もはや迷いの色はなかった。

アルス「父さんを 連れてくるよ。」

そうして少年が歩き出そうとした時だった。

マリベル「待って。」

アルス「っ……?」

マリベル「……あたしが行くわ。」

少年の肩に一瞬だけ手を添えると少女はそのまま雑踏の中に消えて行ってしまった。

アルス「…………………。」
アルス「カデルさん ボロンゴさん。」

しばらく少女の消えた跡を眺めていた少年だったが、振り返ると二人の海賊に声をかける。

ボロンゴ「なんでしょうか アルスさま。」

アルス「人払いを お願いできませんか。ぼくたちと シャークアイさん アニエスさんだけで お話がしたいんです。」

カデル「かしこまりました。」

少年がそう伝えると二人はすぐに辺りの人々を辺りから遠ざけ、少し離れたところで邪魔が入らないように見張りを始める。

アルス「お父さん お母さん。」

シャーク「なんだい アルス。」

アニエス「……ボルカノさんに お話しするのですね?」

人魚の母親は少年の意図がわかっていたらしく、少しだけ目を細めて少年を見上げる。

アルス「……はい。」

シャーク「そうか…… わかった。」
シャーク「この先何が 起ころうと オレたちは お前の味方だ。」
シャーク「臆することなく 思いの丈を ぶつけるといい。」

そう言って総領の父親は少年の肩を叩く。

アルス「ありがとうございます お父さん。」

アニエス「……いらしたみたいね。」

アルス「…………………。」

人魚の見据える先にはさきほどまでいた少女と、少年のもう一人の父である大男が立っていた。



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