過去ログ - 【DQ7】マリベル「アミット漁についていくわ。」【後日談】
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757: ◆N7KRije7Xs[sage saga]
2017/01/16(月) 20:01:05.69 ID:da5wJlLm0

少女は真っ赤なリンゴを片手にそれをしばらく見つめていた。

マリベル「…………………。」

気分を変えようと、皮も剥かずにそのままかじりつく。

“シャリ”という食感と共に爽やかな酸味と甘みが口いっぱいに広がる。
密のぎっしり詰まったそれはエスタード島で採れるものと同じぐらい強い誘惑の香りがした。

マリベル「……おいし。」

少女はリンゴをかじるのが好きだった。

小さい頃からよく食べて育ったということもあるが、
何より生でかじった時にしか味わえない皮と実の絶妙な渋みと甘みがたまらなく好きで、
町や村によった時は必ず買って一人食べていたものだった。

かつての移住者が楽園と呼んだ島に実る禁断の果実は、少女を虜にしたのだ。



“シャリ…”



少女はリンゴをかじる。

その甘美なうるおいは少女の心のわだかまりを優しくほどいていく。
そして同時にその一口一口が旅で起こった出来事を、手に入れたものを、そして失くしてきたものを少女に思い起こさせていく。

マリベル「思えば あの時もそうだっけ……。」

初めてあの神殿から過去の世界に旅立つ前にもこんな赤いリンゴをかじっていた気がする。



楽園から飛び出した少年たちについて行き、旅を共にしてきた少女は今、再び禁断の果実をかじる。



しかしそれは誰かの思惑のためにするのではない。誰かにそそのかされたわけでもない。



彼女は自分の意思でリンゴをかじる。



決して知恵を授けてはくれない贖罪の実をかじり、少女は今、何を手にするのだろうか。

マリベル「…今からでも 遅くないよね……。」

その場にはいない誰かに呟く。

マリベル「…しっかり しなくちゃ!」

これは贖罪の旅ではないのだ。

マリベル「あたしが支えるって 決めたじゃない!」

頬を両手で一度だけ叩いて気付けすると、少女は日誌を閉じる。

マリベル「まだ 起きてるかな……。」

そう言って立ち上がると、少女は厨房の扉を開けてもう一人のエデンの戦士を探しに出かけるのだった。





そして……




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