過去ログ - 花丸「はなまるぴっぴは善い子だけずら」
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16:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/25(日) 22:24:29.38 ID:O8fGFwM8o
「言っただろ、口説くって」

 善男の指が花丸の顎を掴んで、無理矢理に正面を向かせた。
顔の動かせない花丸は、目だけ逸らして抗議する。

「強引ずら」

「嫌か?」

「嫌ではないずら。でも……」

 花丸は声を濁らせた。

 嫌ではない。
逆に、善子の煮え切らない態度や察してくれない鈍さに散々焦らされてきたのだ。
多少は強引な方が、却って手間も省けるというものだ。

 だが、花丸の胸には、眼前の善男に対する違和感も同居していた。
善男を頼もしいと思う上、格好良いとも思っている。
惚れかけているのは認めざるを得ないが、惚れるまでに至れない。
身を任せるに得体の知れない不安があった。何処か怖い。

「ずら丸。俺はお前が欲しい。だから、俺を必要とする世界に留まっていろ」

 善男が口唇を近付けてきた。このまま身を委ねると、もう戻れなくなる気がした。
ここに来て花丸の脳裏に過るは、頼りない善子の姿だった。
頼りはないが、根は優しくて善い子の姿だった。
頼もしくとも危険な香りを漂わせる悪い子ではない。

「助けて、善子ちゃんっ」

 眼前の善男を消し飛ばす大きな叫び声が、花丸の口から迸り出た。
途端に雪景色は崩壊し、善男も輪郭を歪ませながら消えていった。



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