10:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:48:25.27 ID:tFwGSLOi0
身体を震わせるほどの歓声と、スポットライトが照らし出す汗。
輝かんばかりの笑顔に、心に響き渡るメロディ。
ステップは軽やかに。リリックは情熱的に。指先に、つま先に、精一杯の心を込めて。
レッスンで磨き上げたすべてを見せつけるダンス。
自分自身の全身全霊をかけたボーカル。
見るものすべてを魅了してやまないヴィジュアル。
爆発しそうな心臓を冷静に抑えて。けれど弾けるほどに情熱的に。そしてまぶしいほどに愛らしく。
――それは、願いと祈りで出来た、シンデレラたちの舞踏会。
凛
「どうだった?」
上映が終わり、照明が戻っても一言も口を利かないプロデューサーさんに、凛ちゃんが問いかけました。
プロデューサーさんは食べかけのケーキをそのままに、じっと凛ちゃんを見つめ、はっと思い出したように声をあげます。
P
「まんなか!」
10歳児の語彙にセンターという言葉はないようです。
凛
「そう、真ん中。ステージの中心。アイドルのセンター。つまり、最強。わかる?」
P
「わかる! すごい! お姉ちゃんすごい!」
凛ちゃんはドヤ顔で天を仰ぐと、右手を握りしめました。『YES!』という効果音が聞こえてきそうな握り方です。
凛
「まあね。でも、本当にすごいのは、プロデューサーなんだからね」
P
「なにそれ?」
凛
「私たちを一番輝かせてくれる人、かな。さっきのステージの演出とか、曲の構成も、その人が考えてるんだよ」
P
「それって、えっと……しれーかんだ!」
凛
「うーん、司令官っていうのは……どうなんだろ。まあ近いからいっか。プロデューサーが導いてくれるから、私たちは前だけを向いていられるんだよ。何も心配せずに、最高のパフォーマンスを発揮するだけでいい。それで皆が笑顔になれる」
P
「へぇー……プロデューサーってすごいんだ!」
凛
「そう。すごいんだよ。プロデューサーは」
P
「じゃあ、僕、将来はプロデューサーになる! それで、いっぱい、いーっぱい、みんなをキラキラさせてみせる!」
凛
「うん。そっか。なれるよ、キミなら。最高のプロデューサーに。よしよし、それじゃあ凛お姉ちゃんはかつてないほどに機嫌がいいから、Pくんに特別なサインをあげるね」
にっこりと微笑んでから、私に目くばせをする凛ちゃん。自分で言い出しておいて、用意してなかったんですか。というか私もさすがに色紙は持ってないですよ?
凛
「ペンだけでいいから」
本当に、かつてないほどのゆるっゆるな顔をしている凛ちゃんに、サインペンを渡します。すると凛ちゃんはプロデューサーさんを抱き寄せて、左手に直接サインしました。あ、知ってますよコレ。マーキングっていうんですよ、コレ。
凛
「消えても、忘れちゃダメだからね? 今日のこと。プロデューサーになるってことと、私が一番だってこと」
あはは、耳元でささやきやがって、こいつぅ。私がせっかく機を見て一気に鎮火させたのに、ガソリンぶちまけて火ィ点けやがった♪
そして10歳児に殺到するオオカミの群れ。声を上げる間もなく押し出される凛ちゃん。ライブの感想を一斉に求められつつも、その一つ一つに的確に答えていくプロデューサーさん。語彙力こそ足りないけれど、素直な言葉はそれだけ胸に響くのでしょう。舞い上がりすぎたまゆちゃんが輪の中からよろよろと出てきて、ソファにぐったりと横になりました。
まゆ
「はぁ……はぁ……Pさぁん……ちっちゃくなっても、まゆは大好きですよぉ……」
などと言いつつハンカチで鼻を押さえるまゆちゃん。後で鉄分のサプリメントを支給したほうがいいかもしれません。輪の中から美優さんが出てきました。なにを言われたのかは知りませんが、顔が真っ赤です。身体もすこし震えていますし。大丈夫でしょうか。
美優
「………………産みたい」
大丈夫そうなので放っておくことにしました。
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