18:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:53:58.85 ID:tFwGSLOi0
奈々
「……説明、してくれるんですよね」
茄子
「してもいいですけど、いまはしなくてもいいかなって思ってます。奈々さんには、というよりウサミン星の技術では、せいぜい修正しかできないようですし」
芳乃
「そのようでしてー。遥かなる彼方の人の業ならば、あるいはわたくしでは成せぬ事柄も成し遂げられようと期待したのですがー、どうやら無意味なことだったようでしてー」
イヴ
「改変はできても改編ができない。消すことはできても書くことができない。便利なようで不便ですねぇ」
完全に理解できない会話が展開されている。イヴさんが差し出してくれた紙コップを受け取った。ホットココアを飲む。温かい。そして甘い。
奈々
「奈々は、説明しろと言ってるんですが」
芳乃
「ではわかりやすく一言で言いましょう。奈々殿はプロデューサーを救えません」
言い終わると同時に、奈々さんが消えた。翻るメイド服のスカートが微かに見えて、次の瞬間に凄まじい音がした。
冷蔵庫が事務所の反対側の壁まで飛んでいく。ぶちまけられた中身が床に散らばる。這いつくばった奈々さんが起き上がり、身構えた。
私は振り向いた。さっきまでそこにあった冷蔵庫がなくなっている。完全な超常現象だった。裕子がいなくて心の底からほっとする。
奈々
「……何をしたんですか」
芳乃
「奈々殿の前に冷蔵庫を置いただけでしてー」
奈々
「ふざけてるんですか! ナナが聞いてるのはそんなことじゃありません! どうやって冷蔵庫を動かしたんですか!?」
芳乃
「こうやるのでしてー」
芳乃が緑茶の入った紙コップを掲げた。紙コップが消えて、代わりにニンジンが現れた。
奈々さんが持っていたはずの、おもちゃのニンジンだった。
奈々
「……そ、そんな……だって、そんなことできない……絶対、できないはず……」
奈々さんの握りしめた紙コップから、飲みかけの緑茶がこぼれている。
芳乃
「この世に絶対などないのでしてー」
芳乃はそういって、緑茶を飲んだ。奈々さんの手にはいつの間にかニンジンが握られていて、その足元にはこぼれたはずの緑茶が見当たらない。
茄子
「そう、絶対は存在しないんです。ですから、奈々さん。試してみたらどうですか? そのおもちゃのニンジンで、もう一度、過去を修正すればいいんです。もしかすると、プロデューサーさんが幸せになって、この事務所のみんなも幸せになれる。そんな未来が待っているかもしれません」
イヴ
「撃った相手の個体時間を遡行させることしかできなくても、確かにいまのプロデューサーが相手なら、確実に過去は変えられますしね〜。16年前のライブの代わりに、今日のクリスマスパーティに連れてきたわけですから。その記憶が消えてしまうなら、奈々さんが修正した通りの世界になりますよ〜」
芳乃
「安心してもよいのでしてー。奈々殿が見たかった未来がなんであれ、奈々殿が希うというのであれば、わたくしは全ての因果を元通りに編んで見せましょう。ふふふー。気になさらずともよいのでしてー。これくらいの手間、今までを思えば瞬くほどの時にしかすぎませぬゆえー」
奈々さんはニンジンを構えた。震える指が、引き金にかかった。私はそれをじっと眺めている。
34Res/55.25 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。